別訳【夢中問答集】第五十七問 万事が修行なら捨てるものは何もない? 4/4話

中国人は総じてお茶が大好きなのじゃが、これは消化を助けるため、また気分転換に適しているからじゃ。

まぁ、薬に決まった分量があって過剰摂取すると害があるように、お茶も飲み過ぎると害があるんじゃがな。

唐代の詩人である蘆同や陸羽はお茶の飲み方に関する書籍を著し、その中で茶の効能として「眠気を覚ます」ことを挙げておる。

眠気が学問の妨げになることを防げるというわけじゃな。

「夢日記」で有名な明恵上人が我が国にお茶の栽培を広めたのも、その覚醒効果が仏道修行の助けになると信じたからじゃ。

さて、今どきの連中もお茶を飲むようじゃが、健康のためとか学問・修行の助けのためなどという殊勝なヤツはほとんどおらん。

そりゃあ、仏の教えも廃れようというものじゃ!

同じようにお茶を飲んだとしても、心の持ち方によって役に立ったりムダになったりする。

これは何も山水やお茶に限ったことではない。
歌や音楽なんかも同じことじゃ。

洋楽、邦楽、ロックやJポップなどジャンルは多々あるが、音楽の目的は人の心に安らぎを与えること以外にはない。

だというのに今どきの様子を見ればこれを「芸能活動」とみなして優劣を争い、口々に貶しあう有様・・・

心の安らぎどころかケンカのもととなってしまっておる。

そういうわけだから、仏教の師匠たちは皆口をそろえて「万事の外に工夫なし」と言い、またある時は「万事を捨てて工夫に集中せよ」と言うのじゃ。

何も不思議なことではないぞ。


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