電気売りのエレン 第21話 by クレーン謙

人魚が本当にいる、という事に僕は驚いた。
しかも、その人魚は僕らに向かって話をしている!
キラキラと光り輝く、世にも美しいその人魚は僕とフレムに向かって話を続けた。

「・・・・そう、この子たちは元々は、みんな人魚だったのです。でも人々が『いにしえの言葉』を信じなくなってしまったので、我々人魚族は『力』を無くしました。『力』を無くした人魚は次々と海の泡となって消えてしまったのです。人々が信じる力を無くしてしまえば、我々も存続する事ができないのです。あなたは、きっと魔術師でしょうから、私の言っている事が分かりますよね?」
と人魚の女王がフレムの方を向いて言った。

「ウム。確かに、この世は変わった。人々はもはや、我々魔術師の言葉にすら耳を傾けなくなってしまった・・・」
フレムは持っていた木の銛を手放し、女王に言った。

人魚の女王は柔らかな微笑みを浮かべながら、話を続けた。
「そう、このままでは我々は人々に忘れ去られ、やがては消えゆく運命です。人魚の姿を保てているのは、もう私だけでしょう。生き残った人魚たちは、姿が保てなくなり、クラゲに姿を変えてしまい、気の毒な事に、もうこの子たちは殆ど言葉を忘れてしまいました」

電気クラゲ達は僕らを取り囲むようにして、ユラユラと光り輝きながら漂っていた。
言葉は忘れてしまったのだろうけど、誰が女王なのかはよく分かっているようだった。
人魚の女王は僕の方を向いて言った。
「あなたが、『光の剣士』ですね?ずっと、お待ちしていました」

僕はびっくりして、言った。
「『光の剣士』?僕が?なんだい、『光の剣士』って?」

「我々人魚族の間で、言い伝えがあるのです。『光の剣士』が『いにしえの言葉を操りし者』と手を取り、『光の剣』と『魔術』で敵を倒し、我々人魚族を救ってくれる、という古い言い伝えが」

女王の話を聞き、フレムの目つきが変わった。
「敵、というのは誰の事なんじゃね?」

「電気クラゲは海に落ちる雷を食料にして生きています。ところが、何年か前に南方からやってきたヴァイーラ伯爵という商人が『忘却の海』に浮かぶ島に雷を集める塔を建て始めました。
あの塔が完成すると、海に雷が落ちなくなり、そうすると、この子達は皆死んでしまいます」

僕は女王の話を聞き、とどろき山の事を思いだした。
「そういえば、僕の住んでいた山でも雷が落ちなくなって、それで電気の実が採れなくなったんだ・・・」

「それは、ヴァイーラが建てている塔の影響でしょう。私は、海の中からヴァイーラの動きをずっと見ていました。ヴァイーラはゾーラという凄腕の魔術師を雇い、計画を着々と進めています」

「なんだと、ゾーラだと!?」
急にフレムが大声をあげた。

「フレム、どうしたんだい?知っている人かい?」
「ゾーラは元々ワシの弟子じゃよ。なんたる事だ!あいつがヴァイーラに雇われていたとは!・・・そうか、この前『遠見の術』で我らを監視していたのはゾーラだったんじゃな」

女王は僕とフレムに言った。
「ヴァイーラは、この国の電気を全て奪おうとしています。
どうか私たちを助けてください。『力』を無くした人魚族は、雷の電気がないと皆死んでしまいます。・・・・・あなた方は、電気を採りに海に来たのですね?海の底に私の宮殿があって、そこに電気の蓄えがあります。もし私たちを助けてくれたなら、それをあなた方に差し上げましょう」

――――続く

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