在日コリアンの女の子の青春を柔らかく描く秀作「トロフィー」、そして「かぞくのくに」「GO」

公開初日7月10日に見て大好きになったのが「トロフィー」という映画だ。場所は明示されないが、江戸川に接する葛飾区であろうか、北朝鮮系の朝鮮学校に通う中2の女の子ソヒを描く青春映画である。

監督:孫明雅 出演:孫明雅 井浦新 市川美和子ほか

監督:孫明雅 出演:孫明雅 井浦新 市川美和子ほか

ソヒは朝鮮舞踊部に属し、先生から指導を受けつつ、舞踊大会に出場するために練習を重ねている。センターの女の子が怪我をしたため、主役の座がまわってくる。家族は、朝鮮系小学校の校長であるアッパ(父親)、専業主婦のオンマ、そして小学生の弟だ。

ソヒは、交流会で知り合った日本の公立中の女の子と仲良くなり、一緒にBTS(K-POP人気グループ)のコンサートに行くための資金を得ようと、メルカリを始める。ところが、うっかり、父親の大事なモノを売ってしまい、問題になる。

ライフワークと言うと言い過ぎになるが、この30年、韓国や朝鮮文化に関心を持ってきた自分には大変興味深く面白い。なかなか知ることのなかった、朝鮮学校の中の様子、在日の家庭の様子が分かるのだ。
例えば、学校ではハングルを使うのが推奨され(使ってないと先生に注意される)、チマチョゴリを着て、授業もハングルで行われ、北朝鮮の歴史を勉強する。
ソヒは年頃もあってか、北を擁護する父親に向かって反抗的態度を取ったりする。家は裕福でなく故障した洗濯機も買えない。父親(井浦新 好演)は校長だが、入学する生徒も減って来て、新入生獲得に頭を悩ませている。

この映画、政治的な事に関しては、「北」を肯定する側の発言も疑問視する発言も双方入れているのがいい。きっと、現実として、在日の人は、両方相混じった気持ちを抱いているのだろう。
余談だが、映画の中に「北朝鮮愛好クラブ」のようなものも出て来て驚くが、愛国者もいれば、北のグッズを集めるだけの単なるマニアもいるようで面白い。

とにかくよく知っているなあと思うが、脚本監督の孫明雅(ソン・ミョンア)は、是枝裕和が率いる映像制作会社「分福」で、西川美和に師事した。彼女自身が在日3世で、37歳。これが、初監督作品だ。

この映画、大きな柱は主人公の青春を描くこと。足を負傷した元センターの子に悩みを話し、アドバイスを受けて川べりで踊りの練習をするシーンは美しい。国は違っても、思春期の子が悩むのは同じで、失敗しつつ前に進む。見終わると、人ってこうやって成長するのだと、気持ちが優しくなる。

脇の役者も中々いい。中学生を見守る食べ物屋の主人YOUもいいし、台詞がほとんどないけれど、生徒の踊りを指導する、自ら優美に踊りを舞う先生役のチンスという女優さんもとても印象に残った。
ラストの少女たちが舞う朝鮮舞踊大会での踊りは大変に美しい。タイトルの「トロフィー」の意味が明らかになるシーンでは胸にグッと来るものがあった。

北朝鮮系の在日の家族や人物を描く映画はそれほど多くない。その中で、2012年、在日2世のヤン・ヨンヒ脚本・監督の「かぞくのくに」は高く評価された作品。

「かぞくのくに」監督:ヤン・ヨンヒ 出演:安藤サクラ 井浦新ほか

「かぞくのくに」監督:ヤン・ヨンヒ 出演:安藤サクラ 井浦新ほか

少年の頃、北に渡り、25年ぶりに病気(脳腫瘍)治療のために兄(これも、井浦新)が1か月間の期限で帰国する。同行して来た北の監視員(ヤン・イクチュン)が、家の内外で付いて回る…1959年から実施された北への祖国帰国運動の悲劇や北朝鮮の非人間性システムを静かに告発している。悲しくやるせない。
母親(宮崎美子)が監視員にさえ見せる優しさが大きな人類愛のように思える。尚、そのヤン・イクチュンは、元々は韓国の映画監督である。ソウルのチンピラと女子高生の恋を描いた「息もできない」で2010年のキネマ旬報で外国映画一位を受賞している。

「GO」監督:行定勲 出演:窪塚洋介 柴咲コウほか

「GO」監督:行定勲 出演:窪塚洋介 柴咲コウほか

好きな映画をもう一本! 2001年の「GO」は目の覚めるような快作・傑作だった。金城一紀の直木賞受賞作「GO」を原作に、宮藤官九郎がシナリオを書き、行定勲監督が映画化した。
朝鮮系の高校に通う杉原(窪塚洋介)は向こう意気が強くケンカに明け暮れる。ある日、日本人の女の子桜井(柴咲コウ)と恋に落ちてしまう。そこから、国籍とは?、名前とは?と考え始める…
冴えないようでいて実はしぶとくボクシングも強いアボジ(山崎努)。口は悪いが元気のいいオンマ(大竹しのぶ)も印象に残る。
クドカンはこれが映画脚本第一作。当時、新宿の映画館でばったり会った脚本家の荒井晴彦さんが、いつもは辛口なのに、「クドカンって知ってるか?脚本がいいんだよ」と褒めていたのを思い出す。

(by 新村豊三)

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