【 干支魔談 】魔のイノシシ(1)

新年明けましておめでとうございます。
今年も「魔談」は快調に魔を飛ばすつもりでおります。どうぞよろしくお願いします。

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さて2019年度魔談開始。
……にあたり「魔談」は2016年4月8日に開始して以来、これまで何回の魔を語って来たのだろうとふと思った。早速調べてみた。2016年39回、2017年51回、2018年52回。というわけで合計142回。今回は143回目に当たる。
「しまった。100回記念という自分御褒美タイミングに気がつかなかったぞ」と残念に思ったので、次は200回記念。達成日には「12年もの山崎シングルモルト」でも飲もうかと楽しみにしつつ、ふと机上を見ると友人知人親戚縁者からの年賀状があり、いかにも心身ともに健康そうなイノシシが颯爽と走っている。しかしこの山村における現実のイノシシと人間の関係は……などと正月早々に無粋な暗い話をするのもどうかと思う。ここはひとつ話題を変えて、イノシシにもお得意の「魔」をつけてみることにする。

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そのようなわけで、年頭魔談は干支魔談。魔のイノシシ。
そんなイノシシがいるだろうか。いるのだ。
「もののけ姫」と言えば、ジブリファンは即座に「ははあ」と合点が行くにちがいない。この物語の冒頭シーン。気味の悪いドロドロの怪物が森から飛び出し、爆走し、怒りまくって村を襲おうとしていた。「タタリ神だっ!」という、いかにも和風の怖い言葉が飛び交っていた。勇敢にも防戦したアシタカ青年がこの怪物を倒してみたら、その正体はイノシシだった。

……というわけで、このイノシシはなんでこんなオゾマシイ姿に変貌してしまったのか。なんで問答無用で村を襲おうとしたのか。老人が恐怖と共に発した言葉「タタリ神」とはなにか。年頭魔談は、このあたりを存分に語ってみたい。
……え?……松の内にタタリなど聞きたくもない?
まあまあそう言わず。……ジブリと言えば、かの名作「ラピュタ」に登場のドーラも小気味よいタンカをきっていたではないか。
「海賊が財宝をねらってどこが悪い!」
年頭魔談もこの気合いに習いたい。
「魔談がタタリをねらってどこが悪い!」

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冗談はさておき、大抵の日本人は「タタリ」と耳にすれば、思わず引いてしまう。フーテンのイメージしかないトラさん(渥美清)が金田一耕助を演じた映画「八つ墓村」(1977年)であまりにも有名になったセリフ「タタリじゃーっ」で震え上がった人も多いのではないだろうか。まさに「タタリ」という言葉には、そうした忌まわしいイメージがある。できれば自分の人生で「そんな言葉とは縁を持ちたくない」と思っている日本人が大半だろう。

しかしもともと「タタリ」とは「タツ・アリ」から生まれた言葉だという定説を御存知だろうか。なにが「立つ」で、なにが「あり」なのか。「悪霊」などと思ってはいけない。角川映画関係者は「悪霊」と聞いて喜ぶかもしれないが、日本の神がそれを聞いたら気を悪くするかもしれない。……そう、そこに「立つ・者・あり」なのは神なのだ。

我々の通常の感覚では、それは意外に思う人が多いかもしれない。「えーっ?……悪いことなんもしてないよ。なんでタタルのよ。神様ひどいじゃない!」と心外に思うかもしれない。しかしその不条理は「神」を「天災」と置き換えてみれば、よくわかるのではないだろうか。天災は人が悪いことをしていようがしていまいが、問答無用で人の生活を破壊し、人の命を奪いに来る。津波直後に海に向かって「悪いことなんもしてないよ!」と海を責める人はいない。タケシは海に向かって「馬鹿野郎!」と怒鳴っていたようだが、普通はそんな無意味なことはしない。

つまりここでなにが言いたいかというと、「日本における神の存在は、基本的に(人がどうであれ)たたるものである」ということなんである。「悪さをしていないかぎり、神様は自分を守ってくれるはず」などと甘い考えを持っていてはいけない。もちろん守ってくれる神も少しはいるだろう。しかし大方の神はそうではない。神とは(よくわからん理由で)怒るものであり、(怒ると即座に)たたるものなんである。このあたりマツコデラックスと似ているが、彼女よりももっとやっかいである。その結果、流行の病で大勢の人がばたばたと死ぬ。天災で大勢の人があっという間に殺される。子供も大人もおかまいなしだ。

「もののけ姫」冒頭で村を襲撃するタタリ神もまさにそうだ。その村に対してなにか怒っていたわけではない。村人にしてみれば、なにがなんだかわからない。まさに降ってわいた厄災だ。ところが見張りに立っていた老人は、相手がタタリ神だと知るや「手を出すなっ!」とアシタカを止めた。言葉を換えると「ひたすらに逃げろっ!」と言ってるのだ。しかし暴走タタリ神がもし止まらなかったらいったいどうなってしまうのか。皆殺しである。虐殺である。まさに天災と同じである。

……………………………………   【 つづく 】

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