【 魔の帰巣人形 】(8)
それはまるで次の瞬間には草原の闇にはかなくフッと消え去ってしまう蛍の燐光のように見えた。時々明滅しているように揺れて見えるのは、やはり電気で...
「魔」の一字をこよなく愛する筆者が語る様々な魔の話。垣間のぞくダークサイドをお楽しみください。
それはまるで次の瞬間には草原の闇にはかなくフッと消え去ってしまう蛍の燐光のように見えた。時々明滅しているように揺れて見えるのは、やはり電気で...
「それで……丘の上の教会を見上げつつハアハアと息をきらせながら坂道を登っていたときなんだけどね」 TTはどこか影のある笑みを見せた。彼がと...
「妙だな。じいさんが出て行くところは見なかったぞ」 「……あ、裏口か!」 TTはすぐにパン屋の裏に回った。果たしてドアがあった。ドアノブ...
ようやく老人が出てきた。窒息気分のTTはため息をついた。 老人が手にしていたのは葉書程度の小さな紙だった。低く聞き取りづらい声でボソボソと...
「薄暗い部屋だったので……窓から入ってくる日光が雲でゆらゆらと揺れたりとか、空中を漂ったチリとかホコリがキラキラと光ったりとか……そういうの...
友人TTは数年に一度、2週間から4週間ほどの海外放浪撮影旅行に行く。そうした行動を彼は「BPC」と呼んでいる。「バックパックカメラマン」とい...
帰巣とはなにか。「動物の帰巣性」という言葉がある。この場合の「動物」とは、虫や鳥や魚も含まれる。つまりミツバチや、ツバメや、サケなどにとって...
カメラマンの友人がいる。私よりもふたつ年上で、いまインドで生きておれば(生きていると信じたい)65歳。体重54kg、身長171cmの痩せた男...
「あいつの女が殺ったらしい」 「……女?」 1週間前は「あいつが殺った」だった。しかも「現場のヤツらはみな知ってる」だった。1週間たって...
「あいつが殺ったんだ」 現場監督が口にしたのはキツネ男の名前だった。私はぶあついガラスのジョッキを口に運ぼうとしていたのだが、それが途中で...