版画とちいさなおはなし(25)
「鳥の郵便屋さん」 呼び鈴が鳴ったので窓の外を見ると、帽子をかぶり、グリーンの制服を着た配達人が立っていた。 ドアを開けると、彼は封書を差し出して言った。 「書留です。ここに...
芳納珪の私設レーベル。ワクワクする空想冒険譚をお届けします。
「鳥の郵便屋さん」 呼び鈴が鳴ったので窓の外を見ると、帽子をかぶり、グリーンの制服を着た配達人が立っていた。 ドアを開けると、彼は封書を差し出して言った。 「書留です。ここに...
「水辺にて」 公園でぼんやり池を眺めていると、向こう岸をゴイサギが歩いているのが見えた。 私はそれが似非鳥(えせどり)であると気づいた。他の鳥を見るとそっくりに姿を変える鳥だ。 ゴ...
雲笛(くもぶえ) うちの雲がいよいよ古くなってきたようで、歩くとたまに陥没したりする。 危ないので、新しいのと取り替えることにした。 雲笛を使うのは十年ぶりだ。大きく息を吸って、思い...
きりんは花壇に行って、バラに尋ねました。 「きみの花びらを貸してくれない? 体に貼り付けて模様にしたいんだ」 「私の花びらは全部私のものよ。貸すなんてとんでもないわ」 きりん...
実家の納戸にあった古い植物図鑑を見ていたら、奇妙な見開き記事があった。並んでいるのは日本語の文字だが、さっぱり意味をなしていないのだ。ページの端に「電気を使わない光で照らしてみてくださ...
版画とちいさなおはなし20「光のつぶ」ある村に、口がきけない病の娘がおりました。 幼なじみの若者が、娘の病を治すため、願いが一つだけ叶うという光の粒を探しに旅立ちました。
版画とちいさなおはなし(19)「翼があれば」きょう、はじめて街に行った。 ご主人とぼくは広場に行き、ぼくの背中に山と積んだ花は飛ぶように売れた。
版画とちいさなおはなし18「きのこの上にとり残された羊」いやあ、大変な目にあいました。 森の中に、黄色いふかふかした、いいにおいのする場所があって――
版画とちいさなおはなし17「まだ長靴を履いていない猫」粉挽き小屋を抜け出して、私はお城を眺めました。だんな様の遺言を聞いた時の三男様の顔ときたら! だって遺産は私一匹。そりゃあがっかりするでしょう。
版画とちいさなおはなし(16)「白い犬」 その犬は、毎朝丘の上に行って、森のねぐらから飛んでくるカラスを数えます。 「一羽、二羽、三羽...」