君は優雅に叱責されたことがあるか?〜エドワード・ゴーリー作「優雅に叱責する自転車」に寄せて〜

<この投稿は暴風雨サロン参加企画です。ホテル暴風雨の他のお部屋でも「優雅に叱責する自転車」 に関する投稿が随時アップされていきます。サロン特設ページへ>


君は、優雅に叱責されたことがあるだろうか。僕はない。たぶんないと思う。でも、本当のことを言えば、僕には「優雅に叱責する」ということがどういうことなのか、はっきりわからないのだ。君にはわかるだろうか。

「優雅に叱責する自転車」エドワード・ゴーリー 柴田元幸訳 河出書房新社

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「優雅に叱責する」ということについて、僕が散々考えて思いついたのは、村上春樹の「羊をめぐる冒険」に出てきた、ミセス・エクスのことだ。ミセス・エクスは東京に住む英国人女性で、高級コールガールクラブの経営者だ。

『ミセス・エクスはコール・ガールたちを「ディア」と呼んだ。その彼女の「ディア」には春の昼下がりのような柔らかい響きがあった。「きちんとしたレースの下着をつけなさいね、ディア。パンティーストッキングはいけませんよ」とか』

こういうのを「優雅に叱責する」というのではないだろうか。もっともこれは「叱責」ではく、「アドバイス」かもしれないのだが、ともかく僕が思いついたのはこれだけだ。

だけど、ゴーゴリーの描く自転車は、「ディア」なんて言わない。それどころか、言葉というものを一切発しない。自転車だから。(本当は、最後に一言だけ言うんだけどね。それは原作を読んでのお楽しみ。)ともかくこの自転車は、長い旅の間、何も言わずに、主人公たちを乗せて走ってゆく。どこまでも、いつまでも。

もしかしたら、相手がどんな馬鹿なことをしても、どんな悪いことをしても、何も言わずに、どこまでも、いつまでも一緒に寄り添って行くことが、「優雅に叱責する」ということなのかもしれない。

村上春樹「羊をめぐる冒険」

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※暴風雨サロン参加企画:司書バベルさんが『優雅に叱責する自転車』の別の読み方を教えてくれるスタッフルーム「ナンセンスの楽しみ方」もぜひどうぞ。