KDP(Kindle Direct Publishing)が紙書籍に対応!
アマゾンのKDP(キンドルダイレクトパブリッシング)をご存じだろうか。誰でも自由に電子書籍を作りアマゾンで販売できるサービスだ。すべて無料で利用できる。売れたときアマゾンに手数料を払うだけでいい。
ぼくは2017年からKDPで電子書籍を出版しているが、昨年10月20日にKDPから1通のメールが届いた。KDPでペーパーバック(紙書籍)を作れるようになったお知らせだった。アメリカでは何年も前からあったサービスだが、日本でもいよいよ紙書籍の個人出版がアマゾンでできるようになったのである!
さっそく『プロの絵本作り 本気で絵本作家を目指す人に』をペーパーバック化することにした。これはぼくの20年の経験から絵本作りについて詳しく述べた本で、おかげさまで2年半前に出版してからずっと好評をいただいているが、「紙で読みたい」という声が多かったのも事実なのだ。電子で読みたい人も紙で読みたい人もいるなら、どちらにも応えられたほうがいいに決まっている。
11月29日に完成した本がこれ。
電子しかなかった本が紙になるのは、なんというか、憧れの2次元キャラが実体化して現れたような感覚だ(笑)
紙は持てる!めくれる!背表紙がある!
いやあ、紙っていいですねえ。
アマゾンからのメールを見てすぐやりたいと思った割には一か月以上たっているのは、正直けっこう苦労したからだ。電子書籍制作には慣れていても紙書籍はいろいろ勝手が違った。だからKDPのペーパーバック制作に興味ある方がぼくのような目に合わないために、どんな点に苦労したかなど具体的に書いてみたい。
この記事だけ読めば作れるなんてことはもちろんなくて、KDPヘルプにある<ペーパーバックの説明>を見て作ることになるが、これがはっきりいってわかりにくいので、補助資料として役立てていただければ幸いである。
電子書籍と紙書籍の制作でいちばん違うのは、紙書籍はブックデザイン・本文デザインが重要であることだ。文章物でよく使われるリフロー型電子書籍では読者の端末や設定次第で字の大きさや字詰め、余白等が変わってしまうので、作り手が本文デザインに凝ることはできない。しかし紙書籍ではもちろん作り手が意図したとおりのデザインで読者に届く。美しく読みやすいデザインは美しく読みやすく、そうでないデザインはそうでないように届く。電子よりデザインセンスが必要になるのだ。
ブックデザインは本来プロの仕事なので、素人のぼくには難しかった。プロでなくても同人誌などを自分で印刷所へデータ入稿した経験のある人ならそんなに難しくはないと思う。
版型・縦書き横書き・カラーか白黒か・用紙・表紙仕上げ
本の形から始めよう。
【版型】
まずは本の大きさを決める。A4やA5など一般的なサイズが用意されているが独自の判型も使用できる。
(幅101.6mm~215.9 mm 高さ152.4mm~296.9 mm)の範囲で自由に選べるようだ。
最少101.6×152.4(文庫くらい)から最大A4縦の本まで作れるわけで、豆本や特大の画集・写真集でもないかぎり困ることはないだろう。
『プロの絵本作り』はA5サイズ(幅148㎜ 高さ210㎜)を選択した。雑誌や教科書によくあるサイズである。
【ページを読む方向】
縦書きか横書きかを選択できる。「ページを読む方向 左から右」が横書きで、「ページを読む方向 右から左」が縦書きだ。『プロの絵本作り』はブログでも電子書籍でも横書きで、特に印象を変えたい気持ちもないので横書きのままいくことにした。
【本文印刷】
つづいて本文がカラーか白黒か。
あとで具体的に触れるが、カラーの方が印刷代が高くなる。『プロの絵本作り』は若干の画像が入るもののカラーの必要性は低いので白黒を選んだ。
カラーを選ぶ場合、インクの種類に一般カラーとプレミアムカラーがあると書いてあるが、日本で使えるのはプレミアムカラーだけだ。このように国によっては使えるが日本では使えない機能・サービスはたくさんあるので要注意。しかも日本では使えないことがだいぶ下の方に書いてあったりする。アマゾンさん……(笑)
【本文用紙】
つぎに本文用紙の選択だが、本文がカラーの場合は用紙は選択の余地がなく「白」となる。本文が白黒の場合は白とクリームから選べる。『プロの絵本作り』はクリームにした。好みの問題だが、ただ注意点として白とクリームの用紙は厚さが違う。同じページ数でもクリームの方が若干厚くなる。これは表紙サイズの計算をしたら「背表紙の幅」の数値でわかる。表紙サイズの計算はツールが用意されている。<表紙計算ツール>
少し厚めの本にしたかったらクリーム、薄めにしたかったら白という選択もあるだろう。また「背表紙の幅」は(後述するが)背表紙に入れられるタイトルのテキストサイズにも影響する。
【表紙仕上げ】
表紙仕上げに2種類ある。光沢ありと光沢なしだ。校正刷りを頼んで両方確認した。光沢ありはいわゆるクリアPP加工、つるつるピカピカして、汚れやひっかきにも強いと思われる。光沢なしはぼくが知っているマットPPとはやや違う感じで(マットPPの一種なんだろうけれど)、上品だがややひ弱な印象を受けた。それで光沢ありを選択した。
つぎは本文デザインに触れたいが長くなってきたので回を分ける。
<KDPペーパーバックの作り方。本文デザインと表紙作成>
<KDPのペーパーバックとキンドル電子書籍。費用と利益を考える>
<Amazonで紙書籍を出版・販売するとき知っておきたいこと>
(by 風木一人)
※『プロの絵本作り~本気で絵本作家を目指す人に~』が紙書籍になりました。連載に加筆修正の上、印税、原稿料、著作権、出版契約に関する章を追加。amazonで独占販売中です。