【 生物学魔談 】魔のウィルス(1)

【 パンデミック 】

いまさら説明の必要もないだろうが、いま世界を震撼せしめているのは新型コロナウィルスである。3月12日の時点で世界中の感染者は11万人。これを脅威と見たWHO(世界保険機関)事務局長は、記者会見で「パンデミック」という言葉を持ち出した。
「パンデミック」とはなにか。世界的流行で感染症が拡大する重大深刻な事態のことである。ホラー映画では前宣伝で「全世界震撼!」というキャッチをよく見かけたりするが、ホラー映画ごときで全世界が震撼することはまずない。しかし現実的に全世界を震撼せしめているヤツがいる以上、「震撼」に敏感な魔談としては見逃せない。……ということで今回から「生物学魔談/魔のウィルス」を開始したい。

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さて昨日の3月19日、新型コロナウィルス感染者は地球上で21万人(APP統計)となった。WHOがパンデミックと表現した3月12日からたった1週間で10万人の新たな感染者が出たことになる。毎日1万4285人に感染、毎時間595人に感染、という恐るべき計算になる。
また昨夜、日本では政府専門家会議の会見で「オーバーシュート」という聞き慣れない言葉が出てきた。まるで「ホンダ、出たーっ。シュートだぁー。あぁぁー。オーバーシュートです!」みたいなワールドカップで頻繁に出てくるサッカー用語のような言葉だが、そんな平和な言葉ではない。どこかの地域から爆発的な感染拡大の可能性があるというのだ。

まったく厄介なウィルスがパンデミックとなったものである。これまでにも(旧型)コロナウイルスはしばしば世界的感染を巻き起こしている。しかしWHOがパンデミックと表現したのは、今回の新型コロナウィルスが初めてである。

そのパンデミック。改めてこの言葉を調べてみたら、感染症は、
(1)エンデミック
(2)エピデミック
(3)パンデミック
という順で拡大規模を分類するらしい。つまり
(1)特定の地域で感染
(2)集団で感染拡大
(3)世界的な感染拡大
ということらしい。
今回の新型コロナウィルスで言えば、中国/湖北省/武漢市/華南海鮮市場がまさにその「エンデミック」に相当するのだろう。ところが新型コロナウィルスはあっと言う間に「エピデミック」段階に突入した。こうした状況、「特定地域・特定人間集団」で予想以上の感染拡大を「アウトブレイク」と呼ぶらしい。

【 アウトブレイク 】

アウトブレイクと言えば、映画「アウトブレイク」(1995年)は御存知だろうか。ダスティン・ホフマン主演の「対ウィルス・サスペンス映画」である。ザイール(アフリカ)で内戦中の傭兵部隊に原因不明の出血熱が発生。多数があっという間に死んでしまう。調査に乗り出したアメリカ軍はその感染力と殺傷力に驚き、なんと「隠蔽」手段に出る。つまり爆弾投下による部隊の皆殺しである。このあたり、「アメリカ軍ならやりかねない」と思ってしまう自分が怖いのだが、「隠蔽 → 皆殺し」という無茶苦茶な極悪非道作戦はアメリカ映画を見ているとじつに多い。「ベトナムでもそういうのをやったらしい」だけでなく、「対ウィルスでもそういうのをやったらしい」というのがこの映画である。「対宇宙人でもそういうのをやったらしい」という映画まである。

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ちょっと脱線。つい先日、「久々でスティーブン・キングのB級ホラー映画が観たい」という気分になり、あれこれ迷って「ドリームキャッチャー」(2003年)を観た。これはキング原作の「イット」「スタンド・バイ・ミー」「トミーノッカーズ」3作品をイイトコ取りし、さらに「宇宙人 vs アメリカ軍」という味付まで加えた(という設定を聞いただけで笑える)映画である。まるでポルコ・ロッソが戦闘飛行艇にナウシカを乗せてラピュタを探しに行くような話だが、「もしかして王様(キング)は(映画「シャイニング」の時のように)激しくお怒りじゃないか」と期待して調べてみたら、お怒りどころか「私のホラー小説の映画化で、最高の出来だ」だと。おいおい。

……ま、それはともかく、映画「ドリームキャッチャー」では問答無用で宇宙人を殺しにゆく冷酷非道の大佐がモーガン・フリーマンなのだが、彼は映画「アウトブレイク」でも「隠蔽 → 皆殺し」の指揮をとっている。この2つの映画で彼は主役ではないのだが、その存在感、その(落ち着きはらった)非道ぶりで「まるでモーガン・フリーマンの非道軍歴シリーズみたいな2本だな」と思えるほどだ。
さらにまた彼の非道ぶりはなかなか徹底しており、映画「アウトブレイク」では「隠蔽 → 皆殺し」をしておきながら、密かにそのウィルスを細菌兵器として保管していたりする。まあ軍人モーガン・フリーマンがどうこうというよりも、こうした「あるあるのアメリカ軍非道」にはあきれるばかりだ。

脱線多謝。「あるある」といえば、まさに今のようなパンデミック状況で、集団恐怖心理に乗っかって人々を襲う魔がデマである。今回の新型コロナウィルス発生でも、「武漢の生物兵器研究所から流失?」と一面に(第一面ですよ)掲載した夕刊フジ(3月10日付)のような報道もあり、本当にあきれる。
こうした「出魔/デマ」がかつてない速度で世界中にはばたき簡単にパンデミックとなってしまうところが、我々の現社会における「いまそこにある魔」であると思われる。「魔談」はそこにスポットを当てて集団恐怖心理を注視していきたい。

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ところで冒頭タイトルで【 生物学魔談 】と謳っていながらいまさらだが、「そもそもウィルスはどういう生物なのか?」とふと疑問に思い改めて調べてみたところ、なんと「よくわからない」らしい。つまり「どういう生物なのか、よくわからない」のではなく「生物なのか、そうではないのか、よくわからない」というのだ。
「そんなバカな。これほど人類を殺した(あるいは死へと導いた)悪魔が生物じゃなかったら、いったいなんだ?」という(怒り半分の)疑問が出てくるのだが、要は「生物とはなにか?」という定義にそって考えた場合、ウィルスは「生物といえる/生物とはいえない」の両論に分かれるらしい。

というわけで次回は新型コロナウィルスのパンデミック動向・デマ動向を注視しながら、「どうしてウィルスは生物とはいえないのか?」という率直な疑問から入っていきたい。

……………………………………    【 つづく 】

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