また、こんな話がある。
昔々、まだ生身のブッダがいたころのことじゃ。古代インドの大国であったコーサラ国のビドゥーダバ(瑠璃)太子は、ブッダの親元であるシャカ族に強烈な怨みを持っていた。そして王位につくと同時に、シャカ族を殲滅しようとしたのじゃ。
ブッダはそれを察知して、三度まで阻止したのじゃが、四度目はもう放っておいた。
で、実に一億人近くが殺されることになったのじゃが、ブッダの弟子の一人モッガラーナ(目蓮尊者)はこれを知ってくってかかったのじゃ。
モッガラーナ:「ブッダ! あんた仏でしょ!? 『世界中の人々を救済する』っていつも言っていたじゃありませんか! ましてや、今やられているのは貴方の親兄弟や親戚一同ですよ! どうして助けないんですか!?」
ブッダ:「ああ、そうだな。オレもできるもんならそうしたい。でもな、オレにもできないことがあるんだよ・・・」
さぁ、モッガラーナは全く納得がいかない。憤然として戦場へかけつけると、かろうじて生き残っていた五百人を救い出し、ミラクルパワーを発揮して、金属製のドーム状シェルターを作って、皆をその中に避難させたのじゃ。
ことの次第を報告にきたモッガラーナに、ブッダはこう言ったそうな。
「オマエなぁ・・・ オレにもできないことがオマエにできるわけないだろう? 今、彼らが滅びることは、はるか昔からの因縁の連鎖が招いた『業』によるのであって、小手先のワザでもって解決できるような種類のものではないんだよ。オマエは『ウマイことやった』と思っているのだろうが、まぁ、戻ってみてごらん。オレの言っている意味がよくわかるから」
モッガラーナが急いでシェルターに戻ってみると、果たして五百人は全員、シェルターの中で死に絶えていたとのことじゃ・・・
どうじゃ、キビシイじゃろう? お経の中にはこんな話が山盛り転がっているのじゃ。「祈ったからかなう」などという甘っちょろい考えは通用しないということを知るべきじゃ!
<第六問 祈りはかなうか? 完>
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