別訳【夢中問答集】第十八問 「魔」とは何か? 2/2話

誰よりも長くブッダ本人の横につき従い、誰よりもたくさんブッダ本人の教えを聞いていたアーナンダでさえ、簡単におちょくられてしまう。そこら辺のボンクラどもがかなうハズがないよな。

「霊能力者」などと称する者を有り難がるような連中は、まず「魔道」に入っていると考えてよいと思うぞ!

一方、外からくる悪魔に悩まされることはなくても、知識や能力をひけらかしたり、あれこれとカンチガイして調子に乗ったり、素直に人の意見を聞くことができなくなったり、自分ひとりだけよければOKなどと考えたり、はたまた「可哀そうな人」に恵んでやることで悦に入ってみたりということがあるとするならば、これらは全て「内魔」に憑りつかれているといえる。

体調を崩したり、事故や事件に巻き込まれたりして修行が途絶えてしまうのは「魔境」じゃ。

マジメなヤツが思いつめるあまり、「ああ、寝る間も惜しい! メシを食うヒマも惜しい! ああ、なんでもっと早く悟れないんだ! チクショウ、チクショウ!」などとひとりで大騒ぎして涙ぐんだりしているようなのは「魔障」といえる。

逆に、「ああ、めんどクセェ・・・ ダリィんだよなぁ・・・」とかなんとか言っては修行をサボるのも「魔障」じゃ。

また、ある人に心酔するあまり、その人の「小便であっても飲みたい!」などと考える。これもれっきとした「魔障」じゃ。

逆に、立派だと思って尊敬していた人のちょっとしたスキャンダルを耳にして、「なんやしょうもない!さてはこれまで聞いてきた教えも全部ウソだな!?」とばかりに全否定してしまうのも「魔障」じゃ。

「貪り」「怒り」などの感情が強力に沸き起こってくるのはもちろん「魔障」。

そういった感情を消し去ることができないからといって悩むのも「魔障」。

このような様々な「魔障」は、修行者の肝が据わっていない場合に発生する。

しかし、肝がちゃんと据わっておったとしても、発動することがあるのじゃ。

ただ、その場合は、ロウソクが消える瞬間にパッと明るくなるようなものなので、ことさらに驚いたり慌てたりしなければ、じきに収まるので問題ない。

<第十八問 「魔」とは何か? 完>


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