電気売りのエレン 第34話 by クレーン謙

ヴァイーラの船は、他の砲門も開き、立て続けに大砲を撃ち続けた。
ズガーン、ズガーン、と大砲は火を噴き、
青白く光る光の砲弾が次々と、ギルドの船隊に向かって飛んで行った。
砲弾がギルドの船に当たると、ピカッと太陽のように眩しく光り輝き、光り輝きながらギルド
の船が消えていった。
船が消えた後の水面にはシューシューと水蒸気が立ち上るだけで、後には何も残らなかった。

ギルドの船隊も大砲や弓矢を撃ち返したけど、ヴァイーラの船に届く事はなく、放たれた鉄の
砲弾や弓矢は手前の海上に落ち、水柱を上げるだけだった。
もうどうにもならない、と思ったのか、ギルドの船隊が踵を返し撤退を始めた。
しかしヴァイーラの船は、攻撃の手を緩める事はなかった。
逃げてゆく船に向かって、ヴァイーラの船は光の砲弾を撃ち続けた。

「ヴァイーラ、もう止めよ!彼らはもう撤退を始めておる!」
とフレムがヴァイーラに向かい叫んだ。

ヴァイーラ伯爵は、フレムの方へ振り向きニヤリと笑い、そして手を挙げ船に向けて何か合図
を送った。
そうすると、ようやく船は大砲を撃つ事を止めた。
響き渡る大砲の轟音が鳴り止み、再び岬の上は静まり返り、海の波の音が聞こえてきた。
雷が落ちた後のように、空気中には焦げた電気の匂いが漂っていた。

船が大砲を撃ち止めるのを見届けると、ヴァイーラは腰から何かを取り出した。
それは、先っぽがラッパのような形をした短銃だった。
ヴァイーラは、その短銃を僕らに向けながら言った。
「この銃には、あの大砲と同じ砲弾が込められています。撃てば、あなた方はあの船と同じよ
うに、跡形もなく消えるでしょう。・・・・・・・さて、取り引きを始めましょうか。
こちらのお嬢さんを返す代わりに、まずはあなた方の、その馬をお渡しいただきたい」

ヴァイーラがそのように言うのを聞き、フレムは一段と険しい表情を浮かべた。
「・・・・知っておったのだな。この馬が一角獣だという事を」

ヴァイーラは隣に佇んでいる少女を指差して言った。
「ここにいる私の娘、マーヤがそれを突き止めました。あなたは『結界』を貼り、一角獣の存
在を我らに知られないようにしていた。違いますかな?
そう、その一角獣は我が商社にとって、脅威となります。一角獣を我らに渡せば、レーチェル
を返しましょう」

ジョーが一角獣?
なんの事か全然分からなかったけど、どうやらフレムは最初からその事を知っていたようだっ
た。
僕は何か言おうとしたけど、その前にフレムが小声で言った。
「エレン、あいつの言う事を信じるな!あいつはレーチェルを返す気はない。最初からワシら
をまとめて消すつもりじゃ!」
そして、フレムは低い声で何か呪文を唱え始めた。

それを見ていたゾーラは、僕らに杖を向けながら言った。
「俺の魔術はすでに、あなたの『力』をはるかに上回っている。我らを消そうとしても、石に
変えようとしても、ムダですぞ」
フレムは呪文を言い続けたけど、確かに何も起こらなかった。

ヴァイーラは薄ら笑いを浮かべながら、僕らに狙いを定め、銃の引き金を引いた。
ズダーンと音をたて、銃が火を噴いたその瞬間、ジョーが飛び出し、僕らの前に立ちふさがっ
た。
銃から飛び出した光の玉が、ジョーに当たり、ギルドの船と同じように光り輝き始めた。

「ジョー!」
僕はジョーが消えてしまうと思ったけど、でもジョーは消えなかった。
ジョーは光り輝きながら、その姿を大きくしていき、頭からは長いツノが生えてきた。
光が止むと、そこには大きさが倍ぐらいになった、頭に長いツノを生やした一角獣が立ってい
た。

ジョーは、いや一角獣は、一度僕らの方をチラと見ると、大きな蹄の音を立てながら、ヴァ
イーラ達のところまで突進していった。
そして、その大きな口でレーチェルとマーヤをつまみ、バカッバカッバカッと音を立てながら
僕らの所へと戻ってきた。

「さあ、急いでボクの背中に乗ってください!ここは一旦、撤退しましょう!」
と一角獣が言った。
驚く間もなく、僕とフレムが一角獣の背中に乗ると、一角獣は勢いよく深い霧の中へと駆け出
した。
後ろからは、「姿を見失うな!追え!」と部下達に命じるヴァイーラの声が聞こえた。

大きさが倍になったジョーは、走る速さもとても速かった。
レーチェルとマーヤを口に咥え、僕とフレムを背中に乗せたジョーは霧の中を駆け抜け、海か
ら離れ、原生木が生い茂る森の中へと入っていった。

どれぐらい走っただろうか?
追っ手がいない事を見計らい、ようやくジョーは足を止め、そしてレーチェルとマーヤを静か
に地面に下ろした。
レーチェルは泣く事もなく、ただ呆然としていた。
マーヤという名の少女は、何事もなかったかのように、さっきと同じような表情を浮かべてい
た。

僕は恐怖と緊張のため足がガクガクと震えていたけど、なんとかしてジョーの背中から下へと
降りた。フレムも後から、地面に降りてきた。

「ジョー、君はいったい・・・」
と僕が何か聞こうとしたら、一角獣に姿を変えたジョーが、人間の子供のような声で言った。

「驚いただろう?ジョーが一角獣に姿を変えて。・・・・ボクの名前は『レイ』と言うんだ。
別の世界からやってきた。もっと早くに、君たちと話したかったけど、電気が不足していて、
それが出来なかった。一角獣は、君たちと話をする為の唯一の通信手段なんだ。
さっき、ヴァイーラが撃った電気砲をエネルギー源に変えて、ようやくジョーを一角獣にする
事が出来たんだ。・・・・さて、色々と話したい事がある。どこから話そうか?」

――――続く

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