韓国の裁判映画・ドラマが面白くてたまらない「無垢なる証人」「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」

私事だが、ネットの詐欺事件に遭ってしまい、生まれて初めて自分が当事者の裁判を傍聴することになった。事前に裁判の進み方を知ろうと韓国の裁判映画を見てみたら、面白くてたまらない。ネトフリで弁護士ドラマを見たら、これがまた傑作。詐欺事件のショックも吹き飛び(?)、裁判映画の世界にはまってしまった。今回は2本を紹介したい。

監督:イ・ハン 出演:チョン・ウソン キム・ヒャンギ他

監督:イ・ハン 出演:チョン・ウソン キム・ヒャンギ他

まず、映画「無垢なる証人」(2019年)。素晴らしい傑作。金持ちの老人が亡くなるが、自殺か他殺かを巡って裁判が行われる。偶然現場を見ていたのが自閉症の女の子で、果たして彼女が証人たり得るのか。彼女の証言で被告の有罪・無罪が決まる。

シナリオが大変良く出来ていて抜群である。法廷ドラマのサスペンスがあるだけでなく、自閉症の認識も深まる(自閉症の子を取り巻く世界が、当事者にとっていかに生きづらいか、その一端が分かる)。この女の子の場合、長所として記憶力が抜群で、これが裁判に活用される。その展開が真に鮮やかだ。

また、内容がヒューマンである。弁護士が、自分が弁護をする依頼人の「闇」を知った場合、弁護士としての立場をとるのか、人としての立場をとるのか。そこに葛藤があるのがいい。
40代の男性弁護士(チョン・ウソン)が未婚であり、年取った父親が将来を心配していたり友人である社会派女弁護士が出てくるサイドストーリーもいい。若い検事とのやりとりもまた面白い。裁判前にこんな打ち合わせをするのかと勉強にもなる。

「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」演出:ユ・インシク 出演:パク・ウンビン カン・テオ他

「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」演出:ユ・インシク 出演:パク・ウンビン カン・テオ他

次はネットフリックスのドラマ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」(2022)。ネトフリの韓国ドラマは、コロナ時に見た「愛の不時着」こそ最高と思っていたが、これを越えている。
自閉症である若い女性弁護士ウ・ヨンウ(パク・ウンビン)が大手法律事務所に入社し様々な問題に取り組む。彼女は動作がぎこちないなどの特徴を持つが、事務所のチームに支えられ、天才的な能力を発揮する。抜群の記憶力があり、思いも掛けない発想をするのだ。ドラマは、これに彼女の出生の事情が絡み、恋も進展する。

裁判の事案となるのは、結婚式場でのトラブル、自閉症男性の障害事件、財産分与、機械技術のパクリ、脱北者とDV、村の開発問題、子供の教育の過熱、障碍者の性、会社の性差別、ハッキングの問題など多岐に渡る。よくもまあ、こんなに出て来ると思うが、こんな複雑な現代を韓国人は生きているのだ。

何せ脚本が優れ、裁判が2転3転、先が読めないのがよい。成程と思ったり、この手があったのかとか驚いたり。為になると言うか、知的なのだ。そして、やはりヒューマン。笑いながら泣きながら見た回もある。

全て面白い裁判だが、特に好きな話とテーマを挙げる。
結婚式場での被害を訴える話(2話)では、親からの女性の自立がテーマでLGBTQまで出る!
6話の脱北者の暴行事件では、アッと驚く「情」の判決が出る。
13話は会社の女性差別。相手側の庶民派女性弁護士のキャラクターがいい。裁判で負けてもさっぱりして支持者と共に2審に意欲を燃やす彼女が好きな詩を読む件もいい。
14・15話の済州島での道路の通行料金の話は完璧。済州島の観光の魅力を見せつつ、文化財の問題、零細食堂の保護、男女の恋などを扱っていて、終わりには幸福感に包まれる。食べ物が美味しそう。お坊さんのゆったりして滋味あふれる人間性がいい。

まあ、自閉症の方が弁護士の設定なんて、ファンタジーと言えばファンタジーだろう。しかし、この20年間の韓国の社会の変化を反映している。以前は、韓国は障碍者や外国人労働者など社会的弱者と言える人たちに対して冷たい国だった。しかし、革新政権のおかげか、随分と「優しい国」になっている。ドラマはその反映だ。女性の立場も変わって来た。

因みにウ・ヨンウは、材料が分かる海苔巻きしか食べられない。僕も20年前韓国で勉強している時、毎日毎日、「キンパップ天国」と言う名の食堂のチェーン店で海苔巻きを買い求めて朝ごはんにしていたのを懐かしく思い出した。当時、1000ウォン(100円)だった。因みに、彼女が毎回食べるのは4000ウォンだ。

時にポップで可愛らしい演出も新鮮。例えば、アイデアがひらめくと、好きな「鯨」が画面に登場する。この作品は何と「無垢なる証人」を書いた同じ女性脚本家の手になる。よく法律のことを調べて、面白い筋を考えついた。敬服に値する。

(by 新村豊三)

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