【 生物学魔談 】魔のウィルス(3)

【 衝撃の100万人 】

今朝、人類は衝撃の数字を知ることとなった。新型コロナウィルス感染者100万人突破。しかもこの1週間で50万人の感染が100万人になったというのだ。1日に7万1428人、1時間に2976人、1分で49人。毎分49人が(昼夜を問わず)刻一刻と感染している。死者も5万人を突破。いかなるホラー映画でもありえない「全人類震撼」を我々はいま目撃している。

【 訂正とお詫びと新たな追求 】

前回の「魔のウィルス-2」で「COVID19/コビッド19」を取り上げ「WHOが新型コロナウィルスにつけた名前」と書いた。これは誤りだった。正しくは「COVID19」は「新型コロナウィルスによる感染症の名称」である。訂正してお詫びしたい。……だけでこの件は終わりにせず、今回はこのまちがいにつきもう少し追求した話をしたい。

この指摘を受けたとき、「うわっ、やっちまった。早トチリしたか」とやや焦った気分で手元の資料を全部見直した。すると魔談専用の雑記帳に走り書きで「WHOは新型コロナウィルスをCOVID19と命名。トランプは無視」とメモしていた。
……さてさて「新型コロナウィルスを」ではなく「新型コロナウィルス感染症を」の間違いであったか。それにしてもどこから得た情報であったか。自分のメモミスでなければ、その情報ソースにもまちがいを連絡しておきたい。……との一心で思い出そうとしたのだが、どうしても思い出せない。サイト情報かテレビ報道から得た情報であることは間違いないのだが、なにしろ数時間おきに新たな展開や情報が次々に報じられるような件であり、あちこちから得た情報のメモは5ページにわたっており、その中の1行だったので、もう絶望的にわからない。改めてこうした最先端話題の情報収集の難しさを痛感した。

【 SARS-CoV-2 】

さて話を戻そう。新型コロナウィルスが体内に入り、増殖し、それによって引き起こされた病気が「COVID19」である。いまさらだが、ではその肝心の新型コロナウィルスの名前はなんなのか。これほど人類を脅かしておいていまだに「新型コロナウィルス」はないだろう。ちゃんとした固有の名前があるはず。「新幹線」だっていつまでたっても新幹線でいいはずはない。こだま、ひかり、のぞみ、親しみやすい列車名がちゃんとある。みずほ、はやぶさ、こまち、なんてのもある。みずほ(山陽・九州新幹線)、はやぶさ(東北新幹線)、こまち(秋田新幹線)である。

……それに(こうした妄想はSFサスペンス映画の見過ぎだろうか)新型コロナウィルスは(当然のように)1種類だと信じられている。しかしじつは(電子顕微鏡による外観ではほとんど見分けがつかない)2種類のウィルスの同時発生だった。その発見が遅れた人類はさらに混乱と恐怖に追いこまれた。……なんて事態だって「絶対ありえない」とは誰にも言えないはずだ。新型コロナウィルスA、新型コロナウィルスBとでも呼べばいいというのか。
さらにまたこの人類の危機を見計ったように、武漢以外から新型のウィルスが出てきたらどうするのか。新型Aコロナウィルス、新型Bコロナウィルスとでも呼べばいいというのか。
妄想はつきないが、ともあれこの新型コロナウィルスの名称はなんなのか。

「SARS-CoV-2」
これがICTV(国際ウイルス分類委員会)による正式名称らしい。なんだかねぇ。この名称を見ただけで「ICTVは博物学者しかいないのかね」といった感想が思わず出てくるような名称だ。「新型コロナウィルス名称の汎用性」というかそういった配慮はないのだろうか。
こんな名前、誰も口にしない。報道関係者も「なんだこの名前は。こんな名前がメディアで使えるか」といった感じで、いつまでたっても「新型コロナウィルス」だ。余計なおせっかいだろうが、ICTVはこうした「味もそっけもない分類上の名称」以外にもっと汎用性に配慮したメディア名称を用意するべきではないだろうか。

…………………………………

たとえばアメリカではハリケーンに人名がついていたりする。
2017年を例にあげると、最初に発生したハリケーンから順に、Arlene(アーリーン)、Bret(ブレット)、Cindy(シンディ)と名前がつけられている。頭文字に注目していただけばわかるとおり、アルファベット順に人名がついている。これはもちろん分類上とは別につけられた名称だ。分類上では「発生年 – 発生順番」なので「2017-01」「2017-02」「2017-03」ということになる。
しかしこうした数字や記号だけの名称では、当然ながら印象がうすいし、覚えづらい。音声学的に混乱を招きやすいという問題もある。実際に迅速に警告を発すべきメディアが混乱した事例も多々あったらしい。そこで米国立ハリケーンセンターが上記のようにアルファベット順人名をつけることに決めた(1953年)のだ。

これがなぜ女性名が多いのか、その点はよくわからんが(どことなくそこにアメリカ的ブラックユーモアを感じたりするのだが)、「あらー、今回のハリケーン、私の名前、ついちゃってるし!」なんてお怒りになる女性がまあ少しは出てきたとしても、「2017-02につづき、今度は2017-03です。ニューヨークに向かってます!」なんてのより「ブレットにつづき、今度はシンディです。シンディ、ニューヨークに向かってます!」と報道した方がはるかに明快でインパクトがあって誤報のないのも確かだ。

私などは「シンディ」と聞けば、即座にシンディ・ローパーの独特の笑顔(特にくちびる)を連想する。「シンディ、ニューヨークに向かってます!」と聞けば、これはもう彼女がスカートをひるがえし「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン/Girls Just Want to Have Fun」の曲に乗ってニューヨークのブロードウェイで踊りまくっているところをリアルに連想してしまう。……そういうのもちょっと問題が多いが、ともかく「2017-03、ニューヨークに向かってます!」ではこうはいかない。

【 新型王冠ウィルス 】

ところで(これもいまさらだが)、そもそも「コロナ」とはなんなのか。
この新型ウィルスを電子顕微鏡で観察すると、その皮膜からはスパイクタンパク質(トゲ状のタンパク質)があちこちから突き出ている。じつになんというかトゲトゲしい外観なのだが、そこから「王冠」を意味するラテン語「コロナ」と名付けられたらしい。
おもわず「そんなエエもんか!」と言いたくなるのだが、この新型王冠ウィルスのパンデミックにより、世界各国の感染者数やら、死亡者数やらから始まって、いまや「こんなハズでは」と各国政府が頭を抱えてしまうような御家事情まで出て来てしまった。……というわけで、次回はイタリアとアメリカの惨状に目を向けてみたい。

……………………………………    【 つづく 】

…………………………………………………**

魔談が電子書籍に!……著者自身のチョイスによる4エピソードに加筆修正した完全版。amazonで独占販売中。
専用端末の他、パソコンやスマホでもお読みいただけます。