たとえ悟りを開くことができなかったとしても、教外別伝の宗旨を信じることができておれば、「『正しい宗教・宗派』などというものは言葉で説明できるようなものではない」ということを知っておるので、特定の師匠の言葉に固執してそれだけが正しいなどと言い張ることはなく、師匠たちの言うことがマチマチじゃからといって混乱することもないハズじゃ。
食べ物の味には甘い、辛い、酸っぱいなど様々な種類があるが、その中のひとつだけが「正しい」と決めることなどできるわけがないじゃろう。
好みは人の数だけあるので、ある人は甘党、またある人は辛党だったりするわけなのじゃが、自分の好む味だけを「本物」だとして、それ以外の味をニセモノ扱いするというのは正気の沙汰ではないよなぁ。
宗教、宗派といったものもまたそれと同じじゃ。
人には好みがあるので、「オレはこの宗教・宗派が正しいと思う」ということは当然あるじゃろう。
ただ、だからといって「それ以外はニセモノ!」と思い込むのは間違いじゃ。
法華経には、「人々の執着を木端微塵にする法王が出現して、相手に合わせた手段で教え導く」と書かれておる。
もうわかるじゃろう?
「正しい宗教・宗派」などというものはない。
全ての教えは「人々が持つ様々な性格に合わせた手法」を、その場その場で「仮に」用いているだけなのじゃ。
そもそも「仏と自分は違うものではない」と固く信じておる者は、多種多様な教えや手法を見聞きしたところで、いちいち「正しい」とか「正しくない」とか考えないものじゃ。
昔の師匠は言ったよ。
「仏が説く教えは全て『心』などというマボロシを打ち消すためのものなのじゃ。既にワシにマボロシはない。いまさら仏の教えなど必要ないというわけじゃな」、と。

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