別訳【夢中問答集】第十五問 加持祈祷の真意とは? 2/3話

真言宗は今でも大勢の信者がおるが、究極の真実を求め、世の中のあらゆる演出の裏を見極めて、今のこの生身のままで仏になること(即身成仏)を目指すような殊勝なヤツはほとんどいなくなっちまって、寺に集まってくる連中はといえば、ひたすら「金持ちになりたい」とか願うような俗物ばかり。

そんな状態じゃから、もう密教の高僧たちも困ってしまって、「本当はこれが目的じゃないんだけどなぁ・・・」と思いながらも火を焚いたり太鼓を叩いたりして、しぶしぶ俗物どもにつきあってやっているというのが現状なのじゃ。

それだけならばまだしも、真言宗の坊主の中には、そんなことばかりやっていたおかげで自分まで本旨を見失っちまって、自分の金儲けのためだけに「加持祈祷」の営業に血道をあげるようなのまで現れる始末。

もうこうなってしまうと、名前は密教でも、やっていることはうさんくさい陰陽師と一緒じゃ。心ある真言師は皆、それを嘆いておる。

でもまぁ、最初に「手段としての「演出」を引き受ける」と宣言してしまっているもんじゃから、いまさらやめられないというわけじゃ。

「そんなんでも、仏教に興味を持ってくれるだけマシ」との割り切りも必要だしな。

とはいえ、信者の当然の権利だと思い込んで、寺に対してアレコレとくだらないことを祈るように依頼するようなのは、これはもう信者などではなくて仏教を滅ぼそうとたくらむ敵だと考えるべきじゃ。そんなバチあたりなヤツの祈りなど、かなうわけがない。

・・・まぁ、世の中そんなヤツばっかりなのじゃが、どうして「お坊さん方にあられましては、本来のお勤めである坐禅をきっちりとやって、宗教の中身を濃いものにしていくことに全力を注いでくださいませ。そして、もしご迷惑でなければ、わずかなりとも日常生活の心構えなどについてのヒントをいただけますでしょうか? 私も私なりに努力して、「究極の真実」を追求して参りたいのです!」というような殊勝な態度がとれないかな。

そんなヤツの祈りなら、坊主どもや菩薩たちが進んで実現に向けて後押ししてくれるだろうし、仏様もまた、喜んでかなえてくれること間違いなしだというのに。

それに、例えばそいつが「究極の真実」まで行きつけなかったとしても、必ずや、現実社会に対してためになることがたくさん得られるだろうに。

―――――つづく


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