老化と介護と神経科学20「重要事項説明書でわかること、わからないこと」

有料老人ホームの入居契約をする際には、重要事項説明書というのをもらう。私も、親の施設を選ぶのに、数カ所の重要事項説明書を読んだが、なかなか読むのに骨が折れた。
事業主体の名称、建物面積から、介護士、看護師をはじめとする職員の人数、勤続年数の分布(1年未満が何名、1年以上3年未満が何名など)、提供できるサービスの種類(服薬管理を行うかなど)、その他こまごまとした情報がぎっしりと書いてある。
とても隅々までは読んでいられないが、勉強していくうちに、いくつか重要なポイントがあることはわかった。

おそらく最重要のポイントのひとつで、しかも実態がイメージしにくいのが、「介護に関わる職員体制」(あるいは「人員配置」)というものだろう。
これは、入居者何名に対して介護職員が1名いるか、という数字で、3:1とか2.5:1とか書いてある。だが、3:1と書いてあったら、たとえば30人の入居者に対して常時10人の介護職員が働いているかというと、そうではない。週40時間勤務の職員を10人雇用しているということだ。週20時間勤務のパート職員なら、0.5人分として換算される。
実際には、老人ホームは年中無休、週7日、24時間営業であるから、この常勤換算10人の中には、夜勤や休日出勤の人も含まれる。同時に10人が働いているということはあり得ないわけだ。
実際に普段何人の人が働いているのかは、書類からは読み取れないが、まあ、3:1と書いてある施設よりは2:1の施設の方が人が多いだろうということはわかる。
持病のある入居者にとっては、夜間看護師がいるか、連携する医療機関があるかなども重要だ。
このように、小難しい書類を一生懸命読むと、いろいろ貴重な情報が得られる。老眼に鞭打って読む価値はある。

だが、重要事項説明書を100遍読んでも分からないことはある。
介護士さんたちは優しいか。よく気のつく人たちか。職員同士の仲は良いか。施設の雰囲気は良いか。そういう大切なことは、重要事項説明書を読んでも、綺麗な写真の載ったパンフレットを見ても、決して判らない。料金が高い施設なら大丈夫とも限らない。(逆に言えば、安い施設でも良いスタッフの揃っているところはある。)
そういうことは、実際に施設を見学して、話を聞いて、自分で感じ取るしかない。いや、実際に見たって、素人に簡単にわかるものではないのだろうが、最後は、自分の感覚、そして入居者本人の感覚を信じるしかない。あとは、やっぱり合わないと思ったら、契約寸前でも、入居した後でも契約を解除して、施設選びをやり直す気持ちを持っておくことだろう。(実際にやったら、うんざりするけど。)

うちの母の場合、1回体験入居までいった施設が合わなくて数日で退去し、また施設探しをやり直した。一旦家に戻るという選択肢があったのは幸運だった。そうでなければ、気に入らない施設でも本人に我慢してもらいながら転居先を探すしかない。そういうストレスが認知症に良くないのは周知の事実だ。
幸い、知人に紹介してもらった2ヶ所目の施設は母も気に入ってくれて、今でもそこで機嫌よく暮らしている。

(by みやち)

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