老化と介護と神経科学21「ロックダウン」

コロナウイルス流行への対策として、私の職場でも世間並みにテレワークを導入し、一部の職員を除いて出勤禁止になった。私も毎日自宅にこもっている。

一日中家にいると、思った以上に運動量が減る。普段だってデスクワークが中心で、そんなに動く仕事ではないが、100人以上が入る5階建てのビルで働くというのは、それなりに運動するのだ。自分のデスクから1回トイレに行って戻ってくるだけでも、自宅の中で1日に歩く歩数を超えているのではないだろうか。
在宅勤務になってから、健康のために1日1回は散歩をするようにしているが、歩数を計ってみると、1時間弱歩いても、せいぜい4000歩程度である。普段通勤する日は8000〜9000歩、週末に街に買い物に行くと10000歩くらい歩くから、半分以下の歩数だ。健康を維持するには、積極的に運動を心がけないといけない。

さらには、何処かへ行く自由がない。もちろん、法律で外出が禁じられているわけではないし、実際毎日「自由に」散歩に出ているが、家の近所を歩き回るだけのことである。
そもそも、あまり出歩いてはいけないから自宅勤務になっているのだ。自分の職場にすら行ってはいけないのに、電車に乗って街に遊びに行くというわけにはいかない。文句を言っている場合ではないことはわかっているが、じわじわと気分が悪い。気分を晴らすために友達と飲みに行くわけにもいかない。行きたいところへ行く自由を制限されることが、こんなに精神衛生に悪いとは思わなかった。

もちろん、自由を制限されると言っても、拘束されているわけではない。しかもこれは、私自身の健康と安全のためでもある。世の中には、感染のリスクを承知で、電車やバスに乗って街に仕事に行かなければならない人がたくさんいるのだ。安全な自宅にいられるのは幸せと思わなければならない。

この状況は、介護を受けて暮らす認知症の老人の状況とよく似ていないだろうか。
自宅で家族の介護を受けているにしろ、介護施設に入っているにしろ、身体拘束を受けたり、部屋に閉じ込められたりしている老人はほとんどいないだろう。介護者は、老人の健康で快適な暮らしのために、懸命に努力している。しかし、老人の自由な行動は制限される。一人で外出はできない。どうしても外出するなら付き添い付きで。買い物も自由にはできない。
もちろんそれは全て、本人の健康と安全のためであり、仕方のないことであるし、そういう介護を受けられることは幸せなことだ。
だが、健康と安全のためであっても、自由が制限されるというのは辛いものだな、と、しみじみ思う今日この頃である。

(by みやち)

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