「いつも心に……」 松沢タカコ

ただいまBFUギャラリーにて個展「ハルカナ遊園地〜colorful〜」開催中の松沢タカコさん特別寄稿!塗り絵本「ハルカナ遊園地」はどうやって誕生した?そして松沢さんが「塗り絵」に込めた思いとは?塗り絵、のみならず絵の楽しみ方が広がりそうなお話、お楽しみください!

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一年程前のこと。
個展を開催するにあたり、テーマ決めという最初の局面で、私は大いに迷っておりました。
持って生まれた優柔不断。いろいろとアイデアは出せど、隣の芝生は常に青い。
DM(個展のお知らせ葉書)入稿の締め切りがせまるなか、ふと思いついたのが、あらゆる種族の代表たちが同じ方に向かってゾロゾロと歩いてゆく、という構図でした。
姿形や性格、思想、立場、生い立ち、たとえ全てが違っていたとしても、目指すものが同じならきっと一緒に歩いていけるはず。そんなイラストにならないかしらん?
・・・ぐうたら一筋の私が、どの面下げてそんな中学生みたいなことを?と我ながら思いますけども、まあ思いついちゃったんだからしょうがない。
そんなわけで描いた一枚のイラストを、パレードのようだと思ったことから(「雑多のパレード」というタイトルをつけたそのイラストは、実際に描き進めるなかで、あらゆる種族の代表には程遠い状態になりましたが、さておき)、個展のテーマを遊園地に。
ならばそう、種族といわず、生死を超えたすべての生きもの、或いは宇宙人、おばけ、妖精、妖怪、ミミズだってオケラだって、コロンボだって、訪れる全てのものが平等に楽しくいられる理想郷にしてしまおう。
連想ゲームのように決まったその場所を「サイハテ遊園地」と名付け、12月、個展を開催。

そうしてそれを見に来てくださった出版社の方から、思いがけずお声掛けいただき、決まったのが塗り絵のお仕事でした。
そう、世間はいつのまにやら空前の塗り絵ブーム。少し前には色鉛筆の生産が追いつかない、とニュースになった程でした。本が好きで、本に関わることがしたいとずっと願ってきた私にとって、自分の著書を、しかもデータ配信ではなく、紙媒体で出版できる日が来ようとは!本当に塗り絵ブーム様様です。
出版社の方が遊園地というテーマを気に入ってくださっていたので、様々なものが一緒に楽しめる遊園地、という大筋のコンセプトはそのままに、「サイハテ遊園地」のパラレルワールド的な場所、「ハルカナ遊園地」として、新たに構想を練りました。
こだわったのは、ありえないものたちが集まる場所である以上、アトラクションも現実世界ではありえないものにしよう、ということ。
それから、塗り絵ならではの特徴として、長時間見続けなければならない、ということがあると思います。
以前テレビで某芸人さんが「ドラえもんが好きすぎてマンガを模写していたところ、一見同じに見える1コマ目と2コマ目に微妙な違いがあり、ドラえもんの優しさがそこに表されていることが判った」という話をしていて、なんて粋なんだ、F先生!と思ったのですが、塗り絵ならばそんなふうに見てもらえるかも、と考え、気付いてくれたら嬉しい、という程度の、些細な設定を随所にちりばめました。

そんなこんなで、なんとか無事完成、今年6月初旬にめでたく発売された「ハルカナ遊園地」。
長くなりましたが、今回このBFUギャラリーの個展では、その中から10枚のイラストをピックアップして着彩し、展示させていただきました。
塗り絵に限らず、最近本屋さんでは、著者の方を講師に迎えてワークショップ、という光景をよく見かけます。私もそんなことが出来たらと思うのですが、冒頭でも申し上げた通り、極度に優柔不断な私は、色塗りにおいてもまた然り。アナログ手法の着彩では展示作品としてのレベルに満たないゆえ、いつもの方法(Photoshop着彩)でどうかご容赦ください。

いつも心に遊園地を。
ナンチャッテ☆

松沢タカコ

松沢タカコ個展「ハルカナ遊園地〜colorful〜」開催中(2016年8月31日まで)

暴風雨塗り絵コンテストもやってます!

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松沢タカコさん、新連載始まりました!
2357号室「漂着した大量のチョコレート・パイ」
塗り絵の世界とはまたちょっと違う面白さです。ぜひご覧ください。

視点にまつわるあれやこれやを、3コマのイラストと文章で。

松沢タカコwebサイト「煙渦堂」

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