<赤ワシ探偵シリーズ3>ノルアモイ第十四話「夜間飛行」by 芳納珪
「グレコがどうした?」 エムニは瞼を閉じて、受信した映像を見ているようだ。 「『ロスコのボール』に近づこうとしている」 「ロスコのボール? ああ、あの奇妙な球体か」 エ...
芳納珪の私設レーベル。ワクワクする空想冒険譚をお届けします。
「グレコがどうした?」 エムニは瞼を閉じて、受信した映像を見ているようだ。 「『ロスコのボール』に近づこうとしている」 「ロスコのボール? ああ、あの奇妙な球体か」 エ...
エムニは、料理をする間は通常速度に戻ったので、あっという間に私の前にいくつもの皿がならんだ。 冷蔵庫の中のなけなしの食材を使って作ったとは思えない味に、私は舌鼓を打った。 さすがはフェアー...
あっという間に一日が過ぎた。 私は家主が帰って来る前に、蛙人(カエルじん)の家を出た。世話になった礼に、いくばくかのチップを置いて。 都市の隙間に身を潜めて夜になるのを待ち、暗がりをたどってレ...
巨大な馬が、夜空をバックに燃えさかっていた。 揺らめく炎は冷たく青く、どんなに焼かれても馬は永遠に燃え尽きることがない。 グレコが接触テレパシーで伝えてきたイメージと同じ光景が今、現実...
「兵器とは? 大昔にあったという、戦争の道具ですか」 言いながら私は、無意識にいつも万能銃〈ムラマサ〉を装着している左脇をちらりと見た。今そこには何もない。 レディMが私の視線の動きに...
レディMは話を続けた。 「F・フェアードマンは遺言の中で、逃げ出したノルアモイが再び立体都市に出現することを警戒せよ、見つけたら必ず捕らえて破壊せよ、と指示しました。ですので代々の当主は...
がちゃん! 瀬戸物が触れ合う大きな音がした。 驚いて自分の手元を見ると、しゃれたカップのふちから飛び出したコーヒーが、ソーサーの中と、そのまわりのテーブルの上を濡らしていた。 カップを置...
「それはありがとうございました」 私は立ち上がって頭を下げた。高級感あふれる上層の部屋で貴婦人を前にしているのだから、舞台俳優のようなお辞儀ができればよかったのだが、やり方がわからなかっ...
いい子にしないとノルアモイがやってくる。 青い炎のたてがみを猛々しくなびかせて。 その首は鋼鉄のように硬く、 両眼はペリドットのように光る。 ノルアモイは青い炎に焼かれ続けている。 だか...
「おい!」 私は小さく叫んで、グレコのあとを追おうとした。が、彼と私とでは身体の大きさが全然違う。グレコが通り抜けた隙間に、私は顔も入れることができない。 仕方なく、私が通れる隙間を探...