
今年2026年は、北海道新幹線が開業して10周年です。

新函館北斗から東京行きの一番列車の発売日、2016年2月26日10時。
私は旅の地、釧路駅におりました。

その場で、見知らぬ鉄ちゃんの切符購入の瞬間を目撃し、居合わせた現地のテレビクルーたちと一緒に喜びを分かち合いました。そうか……。あれからもう、10年が経ったのですね……。
と、鉄子ならでは思いを馳せていたところ、な、な、なんと!
この8080号室のある『ホテル暴風雨』さんも、今年2026年4月でオープンして10周年を迎えたようです!!
お祝いを述べるのが、大変遅くなりましたが、おめでとうございます!!!

祝!10周年!ということで、かつてこのホテルに滞在されていた方をはじめ、現在なお逗留されている方からも、お祝いの記事が寄せられているようです。
それぞれに面白味があり、私のように、つい先だってチェックインした人間にとっては、その関係性が少々羨ましくもあります。
ホテルとは、まだまだつきあいの浅い私ですが、オーナーの雨梟殿とは、かれこれ四半世紀に及ぶお付き合いです。
そんな友人からの〝10周年にちなんで何か10にまつわるものを〟との依頼に、頭を捻りました。最初は、私のエッセイらしく、10にまつわる心理学の話なども考え、書き上げたのですが、どうもしっくりきません。
突然ですが、私は映画をよく観ます。
好きな映画はいろいろありますが、ポーランド人監督のクシシェトフ・キェシロフスキさんの『デカローグ』という作品集は、とても印象に残っています。
正確には映画ではなく、1989年から1990年に、ポーランド国内で放送されたドラマなのですが、私はそれをドラマとして観たわけではなく、東京の映画館で後に、彼の代表作『トリコロール三部作』と一緒に、一挙上映されたものを観たのです。
『デカローグ』は、言わずと知れた〝十戒〟ユダヤおよびキリスト教における10の戒めのことです。10の戒めとは概ねこんな感じです(宗派によって若干表現が異なります)。
1.唯一の神:他の神を持ってはならない
2.偶像禁止:神以外のものを神として礼拝してはいけない
3.神の名:神の名をみだりに唱えてはならない
4.安息日:週に一度、神にささげる休息の日を持たねばならない
5.父母:父母を敬え
6.殺人:殺してはならない
7.姦淫:姦淫をしてはならない
8.盗み:盗んではいならない
9.偽証:他人について噓の証言をしてはならない
10.むさぼり:他人の財産や配偶者をむやみ欲しがらない
これらの戒めについて、以下のようなタイトルで、1話完結の10話から成る作品が、キェシロフスキの『デカローグ』なのです。ご本人は「十戒に即しているわけではなく、十戒に言及したことはない」と仰っておられるようですが……。
第1話 ある運命に関する物語
第2話 ある選択に関する物語
第3話 あるクリスマスイヴに関する物語
第4話 ある父と娘に関する物語
第5話 ある殺人に関する物語
第6話 ある愛に関する物語
第7話 ある告白に関する物語
第8話 ある過去に関する物語
第9話 ある孤独に関する物語
第10話 ある希望に関する物語
描かれる主人公は毎話異なりますが、彼らは皆、同じワルシャワの公営団地に住んでいます。
ストーリーはもちろん、私はとにかく、この団地の醸し出す鬱々とした(失礼!)空気感に惹かれました。
この空気の中で佇んでみたくて(何なら少しの間、住んでみたくて)ポーランド語を学び始めたくらいです。
なかなかその気持ちを伝える技術がなかったので、マイナー言語の巣窟である『DILA:大学書林国際語学アカデミー(註)』に入会する際は、「ショパンコンクールに行きたいから(ただしピアノを弾くわけじゃなく)習いたい」と伝えましたが。
今回「10にまつわるもの」と聞いて、そのことを、ふと思い出したのです。
おりしも先週、長く連載していた、いろいろな潮時を描いた『潮時』が大団円を迎えたところでした。
次の物語は何にするか……。
当初は、いつものように、書き溜めたものの中から小出しにしていくことを考えていたのですが、ある妙案が浮かびました。
そうだ!私なりのデカローグを書いてみよう。
とはいえ、私は信心深い人間ではありません。
私の中の神様は、小さい頃から「物を無くした時に探し出させてくれる神」だけであり、姿形のない空気のような存在です。
私は幼少期から、物を無くす度に心の中でその神様にお願いをして、行方不明になった筆箱や腕時計、家の鍵、プリントなどを発見させてもらってきました。
とはいえ、神社に行けばそこの神様にお願いするし(なんたって氏神様は、かの「伊勢神宮」です)、お寺に行けば如来様に手を合わせたりします。滝や大樹や大岩を見ればありがたい気持ちになるし、悪いことをしそうになった時は「お天道様、神様が見てる」と自己制御したりもします。いわゆる、典型的な日本人です。
ゆえに、私が書こうとしている〝デカローグ〟は、宗教的な要素は全く入りません。というか、入れられません。
十戒の言葉を〝拡大解釈(ここ重要!)して〟私の知る日常の物語として描いてみたいと思っています。
これまでのように、書き上がっているものを区切って公開するのとは異なり、全編書下ろしになるので、「今週はお休み」的な日もでるかもしれません(お察しください)。
基本的には毎週1話完結で表したいと思っているのですが、いかんせん冗長的になりがちな私のお話です。どうなることやら……。
そんなわけで、少しペースダウンしたり、毎週公開とはならないかもしれませんが、ゆるゆるとやっていきたいと思いますので、今後とも、どうぞお付き合い願えれば幸いです。よろしくお願い申し上げます。
(by 大日向峰歩)
(註)DILAは別にマイナー言語だけでなく、メジャーな言語も充実しています。
*編集後記* by ホテル暴風雨オーナー雨こと 斎藤雨梟
大日向峰歩作『心を紡いで言葉にすれば』第24回、いかがでしたでしょう。峰歩さんとのおつきあいも25年とは。そんな時間を刻める場所が自分の中にあったことに驚きます。そしてホテル暴風雨10周年。いつもご愛読、ありがとうございます。小説『潮時』が先週ついにラストを迎え、なんとなんと10周年記念に『デカローグ』大日向峰歩バージョンがお目見えです。みなさま、どうぞお楽しみに!!
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