時代を懸命に生きる中国の若者たち「芳華 Youth」

久しぶりに中国映画の秀作を見た。高く評価しているフォン・シャオガンの新作「芳華 Youth」である。中国の監督の中では、この監督が一番好きで最も期待していると以前も書いた記憶がある。親しみやすくポピュラーでありながら、地に足の着いた普通の中国の人々の哀歓や思いを表現する作品を何作も作ってきたからだ。

「芳華 Youth」監督:フォン・シャオガン 出演:ホアン・シュアン ミャオ・ミャオ他

監督:フォン・シャオガン 出演:ホアン・シュアン ミャオ・ミャオ他

今回は、文化大革命中に、戦場にいる軍隊を訪問する若い男女で構成される慰問団メンバーの群像ドラマだ。
1976年が映画のスタートであり、書いてしまうと、文革終了後、この劇団は解散の憂き目にあい、そのメンバーたちがそれぞれ多様な人生を送ることも描かれる。自ずと中国が資本主義を導入し経済成長をたどる歴史を描くことにもなっている。映画のチラシからイメージされるかもしれない単なる明朗な青春ドラマではない。大きなスケールと長い時間のスパンで、多彩な人物たちの光と影の両方が描かれる。そこがいい。

地方の劇団にホー・シャオピンという名の女の子が入団する。この映画は群像劇ではあるが、彼女を中心に描かれており、将来作家となる別のメンバーが語り手になっている構成である。
団員は女性教師の厳しい指導の下、練習に打ち込み成長していくが、シャオピンは同じ部屋の子にイジメを受けることもあるし、この年齢の若者だから、異性を好きになったり恋のさや当てをしたり、誤解されたりする恋模様も描かれたりする。
出てくる少女たちがとても美しい。手足もすらっとしている。まるで宝塚の世界の様だ。長回しを多用する、流れるようなカメラワークで描かれる。正直言うと、前半は、そのテクニックには目を瞠るものの、ドラマそのものはやや深みが足りない気がした。また、若い女優さんの顔の区別が付きにくい憾みはあった。

しかし、この映画は後半が圧倒的に素晴らしい。
例えば、模範生として尊敬されていたある若者が、1979年のベトナムとの戦争に従事することになる(恥ずかしながらこんな戦争があった事実を知らなかった)。シャオピンも野戦病院の看護婦となっている。
若者が指揮を取り、戦場で自らも腕を負傷する、ベトナム軍との死闘の長回しの7分の撮影が痛ましくも素晴らしい(CG撮影は一切ないとの事だ)。
味方の兵士が一人沼に落ち沈んでしまう。リアルで、もうスクリーンを正視できぬほどの迫力と残酷さだ。このシーンに私は涙してしまった。外国人の私でさえ、戦場で闘うことの辛さと悲しみを感じる位だから、中国でこのシーンを見て泣いてしまう観客は相当多かっただろう。中国では4000万の観客がこの作品を見ている。

時代は変わってゆく。毛沢東の死後、中国は資本主義に舵を取る(映画の中で毛沢東の看板がコカコーラの看板に代わるのが印象的)。劇団は無用のものになる。劇団の解散式が描かれる。スピーチをする二人の先生も見事な存在感がある。
解散した後、団員はそれぞれの道をたどっていく。外国へ行き豊かになる者もいるし、資本主義の恩恵にあずかれない生活を続ける者もいる。ストーリーにあまり触れたくないが、主人公と好きな男性との愛の物語も進行する。

トータルして、人々が懸命に時代を生き、かけがえのない人生を送ったことが感得される。監督は渾身の力を込めてこの作品を作っている。歴史を踏まえた社会性とメロドラマが上手く合体し、終盤に至るや人生の感慨までも生み出している。つまり、中国人のための映画を超えて、何人であろうが誰の胸にも響く「普遍性」を獲得していると思う。今まで見た最高の中国映画と言いたい所以である。

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好きな映画をもう一本。文革時代を生き抜く庶民を描く映画として「活きる」がいい。大監督チャン・イーモウの作品。
ある夫婦が中国の40年代、50年代、60年代を生き抜いていく姿を描いた。妻を演じたのはチャン監督のミューズと呼ぶべき大女優コン・リー、調べて初めて気づいたが、夫役は、その後フォン・シャオガンの作品で主役を張るグォ・ヨーであった。
この映画を見て中国の現代史が頭によく入ったことをよく覚えている。日本では2002年に公開。

(by 新村豊三)

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