「水辺にて」
公園でぼんやり池を眺めていると、向こう岸をゴイサギが歩いているのが見えた。 私はそれが似非鳥(えせどり)であると気づいた。他の鳥を見るとそっくりに姿を変える鳥だ。
ゴイサギが立ち止まってこちらを見た。 私も見返した。
しばらくするとゴイサギは、興味を失ったように目をそらして歩き出した。
私は池の上に身を乗り出した。つやつやしたカラスが水面に映っている。私も似非鳥なのだ。似非鳥は似非鳥を見ても姿を変えない。だから、お互いに見つめ合っても何も起きなかった。
こんなときは、何もなかったことにするのがマナーである。
(版画・服部奈々子/おはなし・芳納珪)
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