ホテル暴風雨が10周年です!
2026年4月1日、ホテル暴風雨は10周年を迎えました。連載陣の皆様、読者の皆様には長きにわたり支えていただき感謝の念にたえません。
この長かったような短かったような10年をふりかえり、10大ニュースを発表したいと思います。創立以来の読者様も最近の読者様も、どうぞ皆さまの10年に思いをはせながらのんびりご覧いただければ幸いです。
なにせ10年を10分で語ろうとしています。あいさつはこれくらいに、さっそくカウントダウン形式でまいりましょう。
第10位! ホテル暴風雨オープン
どこに持ってくるか迷いましたが、間違いなく大ニュース、10本には必ず入れなければならない出来事です。オーナー二人(風木一人・斎藤雨梟)それぞれの思いもありますが、それを語ると長くなるので、ここは2002号室のシャルル大熊さんが当時寄せてくださった言葉を再掲してあの懐かしいときを思い出すことといたしましょう。
「ホテル暴風雨の歴史は古い」by シャルル大熊
わたしには叔父がいた。叔父は真の意味でメトロポリタンであった。彼には国境も人種もなかった。宗教も言語も彼の自由をさまたげはしなかった。
少なくとも20ヶ国語を話し、すべての海を渡り、すべての大陸で暮らした。生涯家を持たなかった。いや世界中が彼の家だったというべきだろうか。
その叔父が唯一いささかなりとも執着を見せた場所、世界中どこにいても同じではなく、そこにいることに何か特別な意味があると認めた場所が「ホテル暴風雨」だ。
叔父がいなければ、わたしがこのホテルを知ることはなかっただろう。
ホテル暴風雨はその長い歴史を通じて、宣伝の類をしたことがなかった。
訪れた客の口コミだけが、その存在を知る糸口たりえたが、あまりにも風変りなホテルのため、口コミは自然と怪しげな風味を帯び、妄想か冗談と思われ、宿泊客増加にはさほどつながらなかった。
知る人ぞ知るホテルだったのだ。
今になってなぜ突然ウェブサイトなど作ったのか、わたしは知らない。
ともあれ2016年4月1日、古いホテルに新しい歴史が始まった。
第9位! BFUギャラリー
ホテル内にある小さなギャラリーというコンセプトで、2016年4月開廊以来、37名の作家さんによる52回のWEB展覧会を開催しました。オーナー二人が好きな絵描きさんたちをホテルを訪れる方々にご紹介したかったのです。
BFUはホテル暴風雨(Bo-Fu-U)であるとともに「Best For You」の意味もあります。
2020年末まで、ちょうどホテル暴風雨の歴史の前半を彩ってくれました。毎月1日にバタバタと展示替え作業を行うのが我がホテルの風物詩でした。
ひとまず閉廊しましたが、各展覧会から2作品ずつをチョイスしていまも常設展示しています。よろしければお立ち寄りになってください。
第8位! 最多同時連載
ホテル暴風雨は各室の長期滞在者が自由に作品を発表する「ホテル型ウェブマガジン」ですが、連載数には大きな変動がありました。
2016年4月のオープン時、ホテル暴風雨の連載は5つでした。
文野潤也さん「超訳文庫」
シャルル大熊さん「3万分の1日を」
風木一人オーナー「社長インタビュー」
斎藤雨梟オーナー「ホテル暴風雨の日々」
これがどんどん増えていきます。同時最多連載となったのは、2020/7/7~2021/3/21です。
みやちさん「あてのない旅」
浅羽容子さん「惑星部屋」
クレーン謙さん「RADIO CRANE’S」
芳納珪さん「フラニカ書房」
黒沢秀樹さん「だいじょうぶ、父さんも生まれたて」
ぐっちーさん「妄想生き物紀行」
北野玲さん「魔談」
文野潤也さん「好雪文庫」
新村豊三さん「好きな映画をもう1本!」
風木一人「猫が21歳になりました」
なんと11連載! 週1の連載だけでなく、隔週や10日に一度の連載もありますが、それにしてもこのころは忙しかったです。毎日更新は当然で、一日に3記事が更新されることもありました。斎藤・風木両オーナーがんばりました(笑)
現在は6連載、落ち着いています。
第7位! オンラインストア「心しか泊まれないホテルの想い出」
ホテル暴風雨オープン時から目標にしていたことのひとつがオンラインストアの開設でした。
ホテルにはおみやげもの屋さんがつきものです。ホテル暴風雨で小説や絵を楽しんだあとに関連する何かを持ち帰っていただきたい。そのためのショップが欲しかったのです。
2020年1月にオンラインストア「心しか泊まれないホテルの想い出」をオープンしました。
最初の商品は浅羽容子さんの小説『シメさばケロ美の小冒険』と同じく浅羽さんのペンギン画「エンペラーペンギン」「ロイヤルペンギン」「ヒゲペンギン」でした。
4商品のみのスタートでしたが、いまは品ぞろえも豊富になっています。ぜひ一度のぞいてみてくださいませ。
第6位! 出版レーベル「ホテルの本棚」誕生
ホテル暴風雨オープン時から目標にしていたもう一つのこと、それは「連載をまとめて本にする」でした。
この夢が叶ったのはAmazonのKindle Direct Publishing(KDP)というサービスのおかげです。だれでも自由に、初期費用ゼロで本を作り、Amazonで売ることができます。
2017年に文野潤也さんの連載「好雪文庫」から仏教説話「アングリマーラ」を電子書籍化しました。
2019年には私、風木一人の連載から『プロの絵本作り』を電子書籍化するなどタイトル数を増やしていきます。
2021年からKDPで紙書籍も制作・販売できるようになったので、喜んで紙書籍にも進出しました。
「ホテルの本棚」のレーベル名のもとに、現在までに電子書籍、紙書籍合わせ50冊以上のタイトルを刊行しています。ホテル暴風雨開設当初からの目標をひとつ実現できました。
第5位! ホテル暴風雨展1~3
ホテル暴風雨は「ネット上で面白いことやろう」で始まったプロジェクトですが、当初から完全にネットだけでは面白くないと考えていました。どこかでリアルとつなげてこそ本当に面白くなるはず、ということです。
2年間ネットのみの活動を続けて、2018年4月にはじめてのリアル企画として「ホテル暴風雨展 心しか泊まれないホテルへようこそ」を開催しました。
BFUギャラリー参加の絵描きさん27名による展覧会と、9つのトークショーの複合イベントでした。
会場となった池袋の「ギャラリー路草」は前年できたばかりの新しい広いスペースで、ビルの最上階にあり、「ホテルの2周年記念イベント」にぴったりでした。
日ごろネット上にあるホテル暴風雨が2週間だけリアルに現れる特別感を演出でき、人と、作品と、直接会う喜びをあらためて感じられる場となり、こんな楽しいなら今後も年に一度続けていこうと思いました。
2019年も同規模で春に開催しました。やはり大成功でした。
しかし2020年は同じではありませんでした。4月開催を目指して半年前から準備していたのですが、直前になって延期の決断を迫られます。そう、新型コロナウイルスです。
4月は明らかに無理であることがわかったので、泣く泣く11月に延期しました。正直11月もどうなるかわからないのが当時の状況でした。
開催が迫る中、コロナの状況を気にしながら、本当にできるのか、できるならどんな対策が必要か、必死で考えたのを思い出します。もう6年前のことなんですね。
結局開催はできました。お客さんも前2回ほどではないけれど来てくれました。みんな人と会うこと自体が極めて少なくなっていたので、マスク越しであっても知人の顔を見るだけで嬉しかったものです。
このときの大変な経験から「25名の展覧会 6つのトークイベント 会期2週間」という規模のイベントは当分休止しようと決めました。いろいろな思いはありますが、ちょっと負担が大きかったのです。
いつか4回目のホテル暴風雨展をやる気はあります。それがいつになるか、ぼくにもまだわからないのですが、きっとふさわしいときが来るだろうと思っています。
第4位! 黒沢秀樹さんと絵本と音楽のコラボ
エルアールのギタリスト黒沢秀樹さんとのご縁は『青のない国』(小さい書房)でした。この本の絵を描いてくださった長友啓典さんが、黒沢さんが当時ホームグラウンドとしていたライブハウスのオーナーさんと旧知の仲だったのです。
その後黒沢さんと新たなコラボをしようと相談して2020年に始まったのが、ホテル暴風雨の連載「だいじょうぶ、父さんも生まれたて」でした。
「全然大丈夫じゃないけど大丈夫!」をモットーに黒沢さんが奮闘する、当時1歳半だった息子さんが5歳になるまでの育児日記です。
2019年の終わりごろから、同じタイトルでぼくが絵本を、黒沢さんが曲を作り、ホテル暴風雨展のトークイベントで同時発表するという楽しすぎる計画を立てていました。
しかしこれもコロナの直撃を受けます。
前述のように2020年のホテル暴風雨展3は11月に延期となりました。発表の機会がとんだので制作も伸びました。ぴったり合わせては夢となりましたが、それぞれの作品は完成し、11月のホテル暴風雨展でお披露目となります。黒沢さんに新曲「とんでいく」を生で披露していただいたのはまさに感激のひとときでした。
第3位! 文学フリマ東京に参加
大規模なホテル暴風雨展は休止としても、リアルとの接点は必要だと感じていました。
ホテル暴風雨で連載も個展もしてくださった服部奈々子さんに教えてもらったのが「文学フリマ」でした。
2019年に、服部さん、浅羽容子さん、クレーン謙さん、松沢タカコさん、斎藤雨梟オーナーの、絵と文の両方をかく皆さんが「ホテル暴風雨絵画文芸部」として「文学フリマ東京29」に出店し、私、風木一人も見に行きました。
ホテル暴風雨展休止後、リアルとの接点をどうしようかと考えていたとき、文学フリマのことが浮かびました。さらに2021年の秋にKDPで紙書籍を作れるようになったのが後押しとなりました。
出版レーベル「ホテルの本棚」の活動をリアルの文学フリマと連動できるのは非常に魅力的でした。
2022年11月、はじめてホテル暴風雨として文学フリマ東京35に出店しました。手ごたえは大変すばらしいものでした。紙の本を愛する人がこんなにもいるのかと勇気づけられました。
ホテル暴風雨の連載から生まれた本を直接読者に手渡せる喜び。以後すべての文学フリマ東京に出店しています。
第2位! 最長不倒連載 ふたりの鉄人
10年は短くない歳月です。短めの文章でも週に1回欠かさず書いていくのは大変なことです。能力、情熱、持続力、さらに健康も必要でしょうか。
ホテル暴風雨にはオープン以来10年、一度の休載もなく続いている連載が2つあります。
1666号室、北野玲さんの「魔談」と、3280号室、文野潤也さん(元ぶんのすけさん)の好雪文庫(元超訳文庫)です。
いろんな連載が始まり終わっていく中で、北極星のごとくブレず動かず、独自の光を放ち続けて500回以上。まさにホテル暴風雨の大黒柱です。
ホテル暴風雨全体を魅力的なものにしようと編集にあたるオーナーとしては、間違いなく更新されるコンテンツが2つあることは心の安らぎであり、まこと感謝の念にたえません。
ふたりの鉄人にどうぞご喝采を!
第1位! ホテル暴風雨10周年!
何のひねりもありませんが、10年続いたのがいちばんの大ニュースであり、いちばん嬉しいことでしょう。
10年続けるつもりではいました。なんとなく、できるだろうと思ってはいました。でもそのときは具体的な旅路はまるで見えておらず、どんなことが起こるのか、どんな出会いがあるのか、ホテル暴風雨がどう変わり、世の中がどう変わるか、ふんわりとしか想像できていなかったのです。
いやあ。
ホテル暴風雨も変わりましたが、それ以上に世の中がすっかり変わりました。
10年前は生成AIなんてなかった。
もはや変化が早すぎて誰も未来予測なんてできないでしょう。
それでも変わらないこともあります。
10年前にかかげた宣言を、ここにもう一度かかげておきます。
「迫りくる暴風雨の中、ネットの片隅に小さくとも消えない灯をともす」
11年目もよろしくお願いいたします。
ホテル暴風雨オーナー 風木一人