絶対のおすすめインド映画「RRR」、見ても損はない新海誠の新作「すずめの戸締り」

私はインド映画が好きで、以前も書いたが「きっと、うまくいく」は、見た年のマイベスト、「バーフバリ 王の凱旋」は4位、「パッドマン 5億人の女性を救った男」は2位にした記憶がある。
今度見た「RRR」も、実に素晴らしい映画で、50年に一本の映画と思ったくらいである。こりゃ言い過ぎだろうか。でも子供の頃感じたワクワク感を何十年ぶりに思い出したのである。

監督:S・S・ラージャマウリ 出演:N・T・ラーマ・ラオ・Jr. ラーム・チャラン他

監督:S・S・ラージャマウリ 出演:N・T・ラーマ・ラオ・Jr. ラーム・チャラン他

1920年代の話で、植民地インドの大英帝国への反抗を物語の背景にしており、タイトルの「RRR」は、Rise(蜂起)、Roar(咆哮)、Revolt(反乱)の頭文字を採ったものでアール。
歴史を背景にしたアクションにヒューマニズムが加わる。インド総督府によって理不尽にも少女を連れ去られた部族の男(ビーム)が仲間と都市デリーに入り、そこで知り合った、別の部族出身の警察官(ラーマ)と協力して少女を奪還する話だ。ラーマは、故郷の為にある秘めたる野心を持っている。

上映時間約3時間。少しもダレない。話がよく出来ているうえに見事なアクションシーンが「画」としても鮮やかに展開する。横長スクリーンを十全に使い、ダイナミックでカッコよく、視覚的に見事だ。
例えば、陸橋での少年の救出。列車が陸橋から落ちて少年が川に取り残され炎に包まれている時、ビームとラーマがバイクで駆け付け、橋の両端からロープでぶら下がり、ブランコみたいになって、片や少年をキャッチして相手に放り投げる、片や大きなインドの国旗を相手に放り投げる(その理由は見てのお楽しみ)。まさに手に汗を握る。
その他、総督府への攻撃、肩車攻撃、馬とオートバイの疾走など見たことない活劇の連続。
この活劇の見事さは、弓が出て来ることもあって「21世紀の黒澤明」ではと思ったりした。(実際、監督はクロサワが好きと言っている)。
編集、カメラワーク、そして二人の主役の個性。銃の撃ち方を教える誠実なラーマの父親、憎々しいイギリス人総督府の長官など、役者もいい。ラストは、インド映画の定番であるミュージカルも出てきて陶然としてしまった。本当に気分が良かった。これも、今年のマイベスト映画候補だ。

「すずめの戸締り」監督:新海誠 出演:原菜乃華 松村北斗 深津絵里ほか

「すずめの戸締り」監督:新海誠 出演:原菜乃華 松村北斗 深津絵里ほか

好きな映画をもう一本! 新海誠の新作「すずめの戸締り」が公開されている。新海誠は2016年の「君の名は」から大好きになり、2019年の「天気の子」も劇場で見た。
「君の名は」は「彗星」、「天気の子」は「長雨」と自然現象をテーマにしていたが、今度の作品も、日本に起きる「地震」の「地震封じ」(これが「戸締り」ということだ)をテーマにしている。

宮崎に暮らす高2の女の子すずめ(岩戸鈴芽)は、「扉を探している」という宗像草太(実は、「扉」にカギを掛けて地震を防ぐ不思議な能力を持つ)と出会い、椅子に変身してしまった(!)彼と、言葉をしゃべるダイジンという名の白い猫と共に、四国、東京、東北と旅していく。すずめには、大地震に関連した哀しい過去があることが分かってくる…

今度の映画も、美点が幾つもある。スケールが大きいし、相変わらず絵が緻密でキレイである。構図も素晴らしいし、横長スクリーンをこれまた十分に活用した映像美には圧倒されるくらいだ。加えて、舞台が現代の日本であるため、地名も「新神戸」「お茶の水」などと実名で出て来るし、街のデティールも正確に描かれる。そこもいい。ユーミンや松田聖子など、日本のはやり歌も随所に使われる。
それに今回は、声を担当する俳優さんたちがとても光っている。神戸で出会ったスナックのママさんは私のご贔屓女優伊藤沙莉だと、そのハスキーな声によって、途中で気づいたし、すずめの母親役もいいなあと思ったら深津絵里だった(因みに彼女も大分出身で、九州弁は「母語」である)。

さて、正直に言う。映画を観ている間、残念ながら、その、日本各地に「扉」があり、それにカギをすると地震がおさまるという根本の考えが、スーと胸に入ってこないのだ。それで、いくら画面が白熱、ドラマティックに展開して行っても、その展開に距離を置いてしまう自分がいた。感情移入して手に汗握るという状態にならなかった。
残念と言うべきか、納得させない突飛な発想(?)をしている映画の方が悪い(スンマセン)と言うべきか。
これは、見る観客一人一人が判断すればいいことだろう。私は、すっきりしなかったけれど、力作であることは間違いなく、一見の価値はある。

(by 新村豊三)

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