ついに突入かよ、東京オリンピック!――五輪映画の快作「国家代表!?」など

この稿がアップされる3日後、東京オリンピックが開催だ。57年前の昭和39年、小4の時、田舎で五輪の興奮を経験した自分は、以来、ずっと五輪大好き人間だったが、今や完全に、その真逆の現在の五輪を憎悪する人間へと変わってしまった。嫌う理由は次に依る。

・五輪の商業主義は目に余る。将来やるなら毎回アテネで質素にやれ。
・高温多湿、かつコロナの検査で不自由を強いられる外国選手に対し、ホームの日本選手はじっくり練習。これは競技として不公平ではないのか。
・感染が広がり危険であることが分かっているのに、「決めたので」(誰が決めたんだ?日本に主権はないのか?)と言って、ズルズル続ける政府。この国にリーダーはいない。この国のリーダーは、官僚の書いた文章を読むだけのreaderでしかない。
・開催の意義についても、「東北の復興」―「コロナに打ち勝った証」―「スポーツは世界の心を一つにする」と、コロコロと言を変えて恥ずかしくないのか。「心がひとつ」どころか、日本の中に、開催を巡って対立を生んでいるではないか。
・記者会見でどんどん追及しない、出来ない記者の情けなさ。こんな緊張感のない政権との関係を作ってきたマスコミも恥じてほしい。
・とどのつまり、優れた政治家をきちんと選び育ててこなかった、私たち一人一人にも責任があるのではないか。

いや、これは映画のコラムなのだから、これ以上オリンピック批判を続けるのは控えるが、書いてるうちに怒りが湧いてくる。
頭を切り替えて、五輪に関係した外国映画を紹介したい。東京オリンピックに関しては2016年8月30日の回で記録映画「東京オリンピック」を紹介している。

「国家代表!?」監督:キム・ヨンファ 出演:ハ・ジョンウ キム・ドンウク他

監督:キム・ヨンファ 出演:ハ・ジョンウ キム・ドンウク他

まず、2009年の韓国映画「国家代表!?」。これは、冬季オリンピック誘致のため1996年に初めてスキーのジャンプチームを結成し、練習を重ねて、1998年の長野五輪に参加し健闘する選手たちを描く快作。
上映時間が140分とかなり長く、正直、前半は漫画っぽい展開だが、後半はこれぞ韓国映画と言いたい要素をたっぷりと入れている。米国に養子に行ったが帰国して実母を探す主要選手(ハ・ジョンウ好演)、強い父との関係に悩む選手、祖母や問題のある弟を抱える選手などが登場して、なかなか巧い脚本。大いに笑い、競技の盛り上がりに興奮し、ラストの母子の再会には涙が滲む。

クライマックスの大会で問題が発生し韓国的(?)荒唐無稽ともいえる解決案が出て来る。これもデタラメだが映画的活力に溢れている。書いてしまうと、4人しか選手がいないのに、4人目の選手が霧の中でのジャンプを余儀なくされて足を負傷し飛べなくなってしまうのだ。さあ、これをどう切り抜けるか。
競技シーンのパワフルな描写には唸ってしまう。選手がスロープを滑走するショット、ジャンプして飛翔するショットだけでなく、観客や、母国でテレビを見ながら応援する家族をカットバックの技法で捉える。定石とはいえ、非常に盛り上がる見事な編集。映像に魔力がある、と呼びたい位だ。

監督:クリスティナ・ゴダ 出演:イバーン・フェニェー カタ・ドボー他

「君の涙 ドナウに流れ ハンガリー1956」監督:クリスティナ・ゴダ 出演:イバーン・フェニェー カタ・ドボー他

好きな映画をもう一本! 2006年製作のハンガリー映画「君の涙 ドナウに流れ ハンガリー1956」は知られざる傑作。1956年10月、自由を求めて抗議行動を起こした市民をソ連が武力で鎮圧したハンガリー動乱の直後、12月のヘルシンキ五輪で、ハンガリーとソ連が水球の準決勝で戦った史実を元にしている。因縁というか、時に、神は、劇映画以上にドラマ的な現実を作る。
映画は、水泳選手であるカルチと恋人ヴィキのロマンスもあるが、革命が敗北する様子が緊迫感をもって描かれる。ソ連の戦車による攻撃に革命勢力はむごたらしく押しつぶされる。
クライマックスでは、カルチがヘルシンキの会場でソ連チームと激しく闘う水球シーンと、ヴィキが秘密警察に捉えられ自白の強要を迫られるシーンが、これまたカットバックで描かれる。私は勝利の歓びを感じると共に、粛然とした気持ちを覚えた。
選手たちはその後米国に亡命する。この映画は、祖国を離れざるを得なかった選手たち、そして自由のために命を捧げた沢山の人々への鎮魂歌となっている(この映画は「ハンガリー動乱」の50周年記念として企画された)。
監督は女性で、水球シーンも市街戦も共にリアルで迫力ある演出。東欧ブタペストの落ち着いた色調を出した撮影も見事。
こんな状況の五輪の試合もあるのだと、歴史の重みを感じつつ、深い感慨に浸る。

(by 新村豊三)

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