「ブタじゃないのよ、ブタフィーヌよ」
「今回は、ほぼ日刊イトイ新聞で連載されたマンガ『ブタフィーヌさん』の話をうかがわせてください」
「ブタフィーヌさんの造形、初めて描いたのは落書きなんですよ。そのへんにあった紙になんとなく描いたら気に入って、50号の大きなサイズに描きなおしてArtokyoというイベントに出展したんです。東京都庁の中にあるギャラリーでした。
さいわい評判が良くて、ストーリーを感じると言ってくれる人が何人かいました。それでマンガにしてみようと思ったんです。
1話描いて自分のホームページに載せたらけっこうウケて、嬉しくなって、月に1、2本のペースで7、8本描いたころに、ほぼ日マンガ大賞の募集が出ました。
ほぼ日ファンの文(たかしまさんの奥様)が見つけて「ブタフィーヌさん、出せば?」って言ってくれたんです」
「それが見事受賞」
「はい」
「そして週5日の連載が始まります」
「糸井(重里)さんがおっしゃったんですよ。『毎日の方が楽かもしれいないよ』って。
ぼくは月に1、2回描いてたわけだから、がんばって週1かなと思ってたんです。
でも『それだと毎回ヒット打たないといけない。毎日バット振ってればたまに三振があってもだいじょうぶ。何打席かに一回ヒット打てばいいんだから』と。
糸井さん野球好きだから、野球にたとえておっしゃるんですね(笑)。
そう言われると、『そうだな、毎回ヒットのプレッシャーは大変かも』と思いました。
そして実際初めてみたら、意外なほどすぐになじめました。
平日5日分を水曜日にまとめて入稿だったから、日月にラフを練って、火曜日に仕上げ、水曜日に送るというペースでした。
だから毎日描いてたわけではないんですけど、常に考えてる感じはありましたね。
でも、必ず笑わせなきゃ、ヒット打たなきゃのプレッシャーから自由だったのは糸井さんのアドバイスのおかげです。
だんだん書いているうちにすっかり自分の中に住んでるキャラクターになって、姿が浮かぶんですよ。
ごろごろしてると、ぼくの中でブタフィーもごろごろしてる。
かき氷食べてキーンとなったら、そうだブタフィーもなるかな、これ描こう、とか。
自分の気分をそのままブタフィーヌさんの気分として描くことも多かったです」
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「7年半の長期連載でした」
「今思えば長いですよねえ。一回も休まなかったです。風邪ひいたりはしたと思うけど、ブタフィー描けないほどのことは一度もなかったです。幸いでした。
ふしぎなもので、ブタフィーヌさんは週5本描いていて、今ニワミヤさん(注1)週2本描いているけれど、あまり変わった感じはしないんです。
回数は半分以下なんだから時間の余裕ありそうじゃないですか。でもおんなじなんです。変わらない。
きっと伸び縮みするんですよ。今やっていることにあわせて、身体とか心とか、伸び縮みする。だから、無理かなってこと、やってみた方がいいと思います。
今こうだから、これ以上は無理、と思わない方がいい。ここまでというのは、今の生活に合わせて今の自分ができているだけで、新しい状況になればそれにあわせて変わるんですよ。
身体も心も伸びるんです、うにょーんて(笑)」
※明日更新の第3回では、アーティストとしての「こだわり」についてうかがいます。どうぞお楽しみに!
注1 「ニワミヤさん」はたかしまてつをさんの4コマ漫画。幻冬舎WEBで連載中。ニワミヤさんは幻冬舎電子書籍部門の宣伝隊長でもあるのです!
たかしまてつを tt-web
1967年愛知県生まれ。画家/イラストレーター。1999年ボローニャ国際絵本原画展入選、2005年ほぼ日マンガ大賞受賞、2005年二科展デザイン部イラストレーション部門特選賞を受賞。代表作は「ブタフィーヌさん」(ほぼ日刊イトイ新聞)、「ビッグ・ファット・キャット」シリーズ(幻冬舎)。近刊に風木一人との絵本『とりがいるよ』(角川書店)がある。