『とりがいるよ』大人も楽しい赤ちゃん絵本
風木「たかしまさんがストレートに『これの絵はぼくが描きたい』と言ってくれて、本当にうれしかったです。古い友人なのにいっしょに仕事したことはなかったし、なにより、たかしまさんの絵で想像したら完成像が浮かんだんです。それまでこの絵本にどんな絵が合うのかわかってなかった。
今でもよく覚えているんですけど、組んですぐのころぼくが『赤ちゃん向けの絵本だから』と言ったら、たかしまさんは『赤ちゃん限定と考えることはないでしょ』って言ったんです」
たかしま「そうでした。ぼく自身がこんなに楽しいんだから、当然大人向けでもあると思ったんです。子どもと大人で面白がるところは違うだろうけれど、でもそれぞれに楽しめる、詩のような絵本だと感じました。
だから赤ちゃんが見やすい色とかは意識したけれど、子ども向けの絵にしたというつもりはありません。ただ自分がいいと思う絵を描いたんです」
「たかしまさんが言ってくれた『大人が見ても楽しいよね』って感覚は、最終形にもけっこう生きていると思います」
「詩みたいだなって印象のほかに、もうひとつ魅かれたのがテーマ的なことで、多様性、世の中にはいろんな人がいるってことが、すごく自然に伝わってくる点でした。
知らないものって、みんな同じに見えちゃうんですよね。知らない国に行くと現地の人はみんな同じ顔に見えるけれど、しばらく滞在して友達になると全然違う。集団の中でもぱっと見つけられるようになる。
猫も飼ってなかったころは同じ柄の猫はみんな同じに見えたけれど、飼い始めたらうちの子は全然違うんですよ。
遠くからだと同じように見える鳥たちが、近づいてみるとみんな違う、1羽1羽個性をもって見えてくる。その流れにもぐっときました」
「つい先日、大人の人たちにこの絵本を読む機会があったんです。講演後の感想でまさにそのことに触れてくれた方がいました。伝わってますね」
「2人である程度のところまで進めて、さてどの編集者に見てもらおうとなったとき、たかしまさんがカドカワの鈴木敦子さんを紹介してくれました」
「鈴木さんはずーっとお世話になっている方なんですが、ちょうど児童書セクションに異動されたところで、絶妙のタイミングでした」
「そういうことってありますね。鈴木さんパワフルな編集者で、どんどんアイデア出してくれるし、社内で企画を通すためにも奮戦してくださいました。
赤ちゃんを持つママたちの感想をたくさん集めたのも鈴木さんの発案でした。
3人で保育園へ行って、試作品を読んでもらったりもしましたね」
「ぼくがうらやましいと感じたのは、たかしまさんと鈴木さんの関係です。
たかしまさんと初めて仕事されたとき、鈴木さんはコンピュータの技術書の出版社にいたんですね。その後幻冬舎、それからカドカワへと転職され、担当するジャンルもどんどん変わっているのに、それでも作家と編集者としてのつきあいがずっと続いている。
これは素晴らしいことですよ。作家と編集者の理想の姿だと思います」
「ありがたいですよね。鈴木さんだけではないんですけど、そういう方々がいてくださるおかげでぼくは生きてるようなものです。ホント感謝しかないです」
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『とりがいるよ』サイン本プレゼント!
明日あさってのインタビューは、先月大磯にオープンしたたかしまさんのお店 「At Gallery N’ CAFE」の話題です。お店にちなんだクイズを出題、正解者から2名の方に、たかしまてつを・風木一人ダブルサイン本をプレゼントいたします。どんなクイズか、お楽しみに!
たかしまてつを tt-web
1967年愛知県生まれ。画家/イラストレーター。1999年ボローニャ国際絵本原画展入選、2005年ほぼ日マンガ大賞受賞、2005年二科展デザイン部イラストレーション部門特選賞を受賞。代表作は「ブタフィーヌさん」(ほぼ日刊イトイ新聞)、「ビッグ・ファット・キャット」シリーズ(幻冬舎)。近刊に風木一人との絵本『とりがいるよ』(角川書店)がある。