森信雄七段インタビュー「才能とは何か。村山聖から藤井聡太まで」その6

将棋記者が迫る 棋士の勝負哲学 村瀬信也著

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2017年6月10日(土)都内で行なわれた野島道場15周年記念イベントにおける公開インタビューです。(インタビュアー:山岸浩史 文まとめ:風木一人)

・・・・・・・・・・・・・・・※黒字は森信雄七段、赤字は山岸浩史インタビュアーです。

高速棋譜並べ

「最後に、森一門で有名な『高速棋譜並べ』について教えてください」

「最初村山君がやってたんです。1局の将棋をを2、3分で並べる。
棋譜というのは早く並べるのが大事なんですね。1手見て1手並べて、では疲れるばっかりで意味がない。棋譜並べにならない。
ぱっと見て3手、ぱっと見て3手が基本です。強くなってきたら5手とか10手とか増やしていく。でないと勉強にならない。
あと将棋年鑑とかの解説を見ないことです。初めから解説見てるタイプは強くならない。まずは棋譜だけ並べてそのあと解説を読むならいい」

「棋譜並べは何を身につける勉強なんですか?」

「棋譜並べは肉体労働です。腱鞘炎になる手前くらいまでやらないと意味がない。本当は駒にさわるのが勉強なんです。でもさわるだけでは退屈だから棋譜を並べる。
有段者なら10回同じ棋譜を並べたら絶対覚えます。頭でなく手が勝手に覚える。そういうもんです。
なんでもそうですけど棋譜並べも1日3時間やったら何か身につきます。最初は手がすごく痛くなるんです、慣れていないから。すると今度左手でやるんです。両手使いますね」

「そろそろお時間となりました。森先生どうもありがとうございました。
最後に、今日ゲストで来てくださった飯塚先生(飯塚祐紀七段)からも一言いただけるでしょうか?」

「飯塚です。森先生おつかれさまです。ためになるお話をありがとうございます。首が痛くなるくらいうなづいておりました。
先生にひとつお訊ねしたいことがあります。弟子への接し方についてです。勝ってるときは『この調子でがんばれ』でいいんですが、負けてるとき森先生はどうされますか?」

「負けてる度合いによりますね。医者のカルテと同じに、ABCとあるとすると、Aはほっときますね。Bもほっとく。CやDになったときは、本人をちょっと見て、あとは人に聞きますね。友達、仲間、先輩。親にも。
絶対自分一人で解決しないで聞きこみます。するとみんなが考えてくれるんですよ。『あの子成績悪いけどどうしたんや?』『あそびすぎです』とか。
ぼく一人で考えるよりも総合的に聞いた方がいい。みんなに聞くと原因がだいたいわかってきます」

「なるほど。ありがとうございます。ときには弟子にきついことも言わなければいけませんよね」

「いや、きついこと言わなくていいです。普通に淡々と言えばいいです。君はもうダメだ、とか。(会場爆笑)
全然きつくないですよ。普通に、思っていることを淡々と言えばいいです」

「森先生、飯塚先生、ありがとうございました」

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宝塚にお住まいの森信雄七段は今イベントのために東京にきてくださいました。公開インタビューの前には4時間以上に渡り大勢のファンに指導対局をされ、一人ひとりに丁寧なアドバイスをくださいました。
森先生のブログでも当日の様子をご覧になれます。<森信雄の写真あれこれ

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