サルヴァトーレと漁師たちを囲んで、桟橋あたりはごった返していました。
「だいたい仕事もしねえで、釣った魚は自分のものだと?!勝手なこと言うんじゃねえ!ナードめ!」
「ちょっと待った!仕事をしていないことは今は関係ないだろう?!それに魚は僕が釣ったんだ。証人もいる。それに人が釣った魚を自分たちの魚と言うのは、君たちカッコ悪いと思わないのか?僕らみたいな素人に先を越されて、腹いせに言っているのなら今のうちに謝るんだな。僕なら絶対あんたたちに怒鳴りつけないよ。」
このような調子でどちらも譲り合おうとはしませんでした。
「この魚は僕とスミスのものだ!分けてやるもんか!」
若い漁師がサルヴァトーレを掴みました。
「結局、暴力か!殴ることしかできないのか?!」
「うるせぇ!こっちが聞いてりゃ図に乗りやがって!」
「あのう・・・。ちょっといいです!?」一匹の豚が申し訳なさそうに言いました。
「サルヴァトーレ、僕らも仕事を止めて、あの魚を引き上げるのを手伝ったから僕たちにもあの魚は分けてもらえるよね?」
そう言うと、サルヴァトーレを手伝った数人がサルヴァトーレの目をじっと見つめました。
「ほらみろ!お前だけであの魚を釣れるわけねえ。あの人たちに感謝してみんなで分けるんだな。」
若い漁師はなぜかホッとした様子で、つかんだ手を離し、サルヴァトーレに言いました。
「僕らに分けてもらった分を、他のみんなと分けたらいいだろう?サルヴァトーレ。それならみんな文句言わないと思うけど・・・。」
優しそうな豚は、そう提案しましたが、サルヴァトーレは、首を縦には振りませんでした。
一瞬和らいだ空気も、またサルヴァトーレが譲らない姿勢を見せたことで、再び、ざわつき始めました。
「待ちなさい。ちょっとそこを通しておくれ。」
騒ぎを聞きつけ、町長がやってきました。
町長は一通り、町人の話やサルヴァトーレ、それから漁師たちの話を聞きました。
「そうか、なるほど。サルヴァトーレに、漁師たちよ。この海は町のみんなのものじゃ、その大きな魚を「町の所有物」とするのはどうじゃろうか。まぁ一度みんなに聞いてみたらええ。一人で分けるには大きすぎる。」
町長の一声で町の人たちはすぐさま騒ぎが収まり、魚の所有権をめぐって、投票を行うことになりました。
しかし、サルヴァトーレとスミスは納得いきませんでした。
二人が納得していないまま投票が始まりました。
そしてその投票での選択肢は、
A)魚を釣り上げた所有権をサルヴァトーレ(スミス)個人のものとする。
B)魚は漁師が先に存在を知っていてかつ育てていたので、魚の所有権を漁師たち組織のものとする。
C)釣られたのは町の海域なので、魚の所有権を町のものとする。
果たして結果は・・・。
――――続く
生川真悟(なるかわしんご)
25歳の時絵本に魅せられて絵本を作り始める。たまたま訪れた会場でホテル暴風雨オーナーと出会い、オーナーとホテルが好きになりました。オーナーのようなジェントルマンな雰囲気で、子どもの心の扉を開けワクワクさせられるような児童文学作品を作り続けたい。茶碗蒸し(卵)と薬味好き。平成元年生まれ。野球守備位置はセカンド・ショート。出塁率は4割(ほとんどフォアボール)。ファール打ちとバントが得意。中川創作絵本教室所属、中川たか子を師に仰ぐ。
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