トークショー、やってます
ホテル暴風雨2周年展「心しか泊まれないホテルへようこそ」では、27名の作家の作品を展示する他、(ほぼ)毎日17時〜18時に、トークショーも開催しております。
今回はすでに開催されたトークショーの様子を、ほんの一部ですがご紹介いたします。
佐藤壮広 「信じること」のいま
まずは4月15日(日)に行われた、宗教人類学者、佐藤壮広さんのトークの様子です。
このように作品が展示された壁面に囲まれてのトークです。
風木オーナー「宗教とは何でしょうか?」
佐藤さん「(定義の仕方は色々ありますが)超自然的なものを信じる個人、共同体があればそこに宗教があると考えます」
という根源的なところからお話は始まります。このように広く定義すれば宗教のない社会はないと言ってよく、自称「無宗教」の多い日本人も、あらゆるモノに八百万の神が宿るという考え方、自然に敬意を払うこと、自分が苦しい時、大切な人を失った時に目に見えないものを心のよすがとすること、亡くなった人を弔う儀式を持つこと、などは「宗教的な行為」に他ならない、というお話の導入には参加者の皆さん頷きながら聞いていらっしゃいました。
佐藤さんが執筆者として関わった本
『年表でわかる現代の社会と宗教』(渡邊直樹責任編集、平凡社)
の内容などを紹介しながらお話は進みます。この本は、1995年から2016年までの、「世界」と「日本」での宗教に関わる出来事を年表にした興味深い本です。
そして絵本の朗読に佐藤さんがギターで音をつけるという場面も!
なぜ絵本か?というと、聞き手の風木オーナーが絵本作家だから、というだけではありません。「宗教的なテーマを持つ絵本」をそれぞれが持参して朗読、となったのですが、
佐藤さん選はこちら 風木一人文・石井聖岳絵「ぷしゅー」 えっ?このナンセンス絵本が?という驚きが作者からも会場からも。でも佐藤さんの解説で納得です。
風木オーナー選はこちら メアリ・ニューウェル デパルマ著・風木一人訳「おおきな木のおはなし」 美しい絵で「木」の一生を描き、命の循環を表現した絵本です。
最後の質疑応答コーナーでは、ご自分の人生の中で生じた大切な疑問に違いないものがまっすぐにぶつけられ、ユーモアを交えながらも真摯に答える佐藤さんの姿が印象的でした。
後路好章 子どもの本と50年
続いて4月16日(月)に行われた、絵本作家・編集者の後路好章さんのトークをご紹介します。
児童雑誌・児童書・絵本など子どもの本と関わって50年!
優れた本を数多く世の中に送り出し、たくさんの新人を育てた、今では絵本界の生ける伝説のような後路さんですが、はじめは特に「児童書」「絵本」を作ろうとしたのでもなく、「編集者」を志したのでもなかったという意外なお話から始まります。
でも後で思えば、授業で本をよく読んでくださった小学校の先生の影響があったとのこと、「人生の初期に出会う大人」の存在はとても大きいというお話。その先生の姿を心の中に持ちながら、年若い読者に向けて本を作り続けてこられたのだろうなと思うと、本当にたくさんの読者が、その存在も意識せずに後路さんの恩師の影響を受けているとも言えます。後路さんのおっしゃる以上の意味で、その先生の存在の大きさを感じた方も多かったのではないでしょうか。
出版社を何社か移られてのそれぞれの時代の絵本作り、面白いエピソードがもう宝箱のように飛び出します。
すでに有名な売れっ子作家に仕事を頼むよりも新人を発掘し育てる意義と喜びについて語られたかと思うと、でもすでにプロの作家が「突然化ける」こともあるというエピソードが登場したり、「科学絵本」の分野や「赤ちゃん絵本」の分野において日本の絵本は海外のものとはアプローチが違い、点数も多く非常に優れているという、日本の市場ばかり見ていると気づきにくいことを説明を聞いてなるほど、と納得したり。
擬音語・擬態語を使った絵本が大人から見るとストーリー性に欠けて見えても子どもたちが非常に喜ぶということ、赤ちゃんに対して認識を促すのではなく「遊び」の延長であるのが日本の赤ちゃん絵本の特徴であるということ、特に2場面を1単位としたリズムを打ち出した名作絵本が日本で最初に誕生したことについて、など、実際に絵本を紹介しながらのお話はわかりやすく面白く、皆さん童心にかえって聞き入っていらっしゃるようでした。
質疑応答コーナーも熱気にあふれて終了!
このように、「ホテル暴風雨2周年展」のトークショーは、演者と参加者の距離が(物理的にも)近く、直接質問もできるのが特徴です。
以上、二つのプログラムをご紹介しました。
トークショー、まだまだ毎日開催中、ご参加お待ちしております!
プログラム、空席状況などはこちらのページでご確認の上、メールフォームからぜひお申し込みください!(空席あれば当日のご参加も可能です)